東方紙業は、2008年と2009年の在庫回転率は32.5と16.8で、中国の業界リーダーの4.3倍、7.7倍の水準だと主張していたが、レポートは「東方紙業が持っている資産は、490万ドルの価値があると吹聴している紙くず同然の在庫品の山と、1990年代製の古い機械設備が置かれている工場の建物だけだ」と、容赦なくその仮面を剥がしてみせた。このレポートが発表された途端、東方紙業の株価は50%も下落し、米国証券取引委員会も東方紙業の調査を開始した。

 こうして、あっという間に1つの上場会社をつぶすことに成功したブロックとマディ・ウォーターズ社は、この一戦ですっかり有名になった。しかし、6000ドル以上の経費がかかったこの調査は、ブロックに金銭的な利益をもたらすことができなかった。

 そこで、彼はマディ・ウォーターズ社を空売りの会社にして稼ごうと閃いたのである。

 簡単にいえば、株を借りて、売って現金に換え、株価が下がったらその株を買い戻して借主に返す形で、その中間差益を稼ぐ手法である。だから、株価が下落すればするほど空売りの会社が儲かる。

企業の不正を容赦なく暴き
売り浴びせる投資手法

 長年、中国に暮らしてきたブロックは、自然とその狙いを粉飾決算で株価を釣り上げる手段を常用する一部の中国概念株の上場企業に定めた。その調査手法はシンプルかつ丁寧だ。つまり徹底した調査データで狙いを定めていた会社の仮面を剥がし、その不正を容赦なく暴露する。こうして緑諾科技、中国高速チャンネル(CCME)、多元環球水務、嘉漢林業、輝山乳業など、6つの中国系上場企業が株式市場から駆逐された。

 Luckin Coffeeはマディ・ウォーターズ社の戦績を飾る最新の一例に過ぎない。不正を働いていた関係者を戦慄させるほどの徹底した調査手法を、ここに再現しよう。

 2月1日早朝、マディ・ウォーターズ社はLuckin Coffeeの偽装取引と粉飾決算を告発するレポートを発表した。このレポートのために、マディ・ウォーターズ社は92人の常勤調査員と1418人の非常勤調査員を派遣し、Luckin Coffeeが進出している53都市の中の38都市、4507店舗の中の981店舗を調査して、その調査の全過程を録画した。