喫煙歴は重症化リスク、COVID-19対策に禁煙を写真はイメージです Photo:PIXTA

 新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)発症後の重症化リスクは「高齢」に加え、「糖尿病」「高血圧」「慢性腎臓病」などの基礎疾患だ。また「喫煙」も重症化リスクになることがわかってきた。

 中国の医学雑誌に掲載された報告では、2019年12月30日~20年1月15日までに武漢の救急病院に入院した患者について、診断確定後の入院2週間後の悪化要因が検討されている。

 検討症例78例中11例(14.1%)が呼吸困難、低酸素血症、肺炎などに悪化し、67例(85.1%)が安定もしくは改善を示した。

 悪化症例について背景を調べた結果、入院時の平均年齢が安定群より高い、体温がすでに高かったことに加え、喫煙率が有意に高い人々であることがわかった。同報告では、喫煙者の重症化リスクは非喫煙者よりおよそ14倍高いことが示されている。

 この報告は世界的流行に先立つものだが、これ以降も喫煙やたばこが原因のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が、重症化要因の一つであるとの指摘が相次いだ。喫煙と関連が深い肺がんでも、感染リスクおよび重症化リスクが高い。

 しかも、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ヒトのACE2(アンジオテンシン変換酵素2)を介してヒトの細胞に侵入することがわかっている。

 喫煙者の肺や上気道ではACE2の発現量が増えており、非喫煙者よりもSARS-CoV-2が侵入しやすい可能性があるわけだ。

 いずれにしても、喫煙は喉や肺の炎症を誘発し、免疫細胞のバランスを崩し活動性を低下させることで、免疫機能を障害する。喫煙者が病原体に感染、重症化しやすいのは何もCOVID-19に限った話ではないのだ。

 「今さら禁煙してもなあ」と諦め顔の方もいるだろうが、免疫機能は禁煙後の数週間~数カ月で回復することが知られている。

 COVID-19の流行が長期戦になるのは確実だ。少なくとも予防ワクチンや効果的な治療薬が世に出回るまで、しっかり禁煙した方が安心だと思いますが、いかがでしょうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)