路線価と時価の差が直撃
それは、コロナがいま不動産市場に多大な影響を及ぼしているからだ。
「3月以降、明らかに土地の値段が下がっている。デベロッパーの仕入れ意欲が薄れていることもあって、入札にかけても以前のような値が付かない」と、ある不動産関係者は言う。
もともと過熱気味だった不動産市場。それがここにきて、企業活動の停滞や景気の悪化もあり、調整を余儀なくされているのだ。
こうして土地の市場価格が下がることで、相続には主に二つの影響が出る。
一つは相続税の相対的な“負担増”だ。
そもそも、相続の中心は、家や土地などの不動産だ。その相続税評価額は、建物であれば固定資産税評価額で、土地であれば主に「路線価」によって決められる。
路線価は、国税庁が毎年7月に発表しているが、その価格は、同年の3月に国土交通省によって公表される「公示地価」の約8割が目安となっている。
問題となるのは、この公示地価が基準にしているのが「1月1日」時点の市場価格だということなのだ。
つまるところ、今年の3月に公表された公示地価は、コロナショックによる景気減速を織り込んでおらず、その価格を反映して7月に発表される路線価も相場に合わないものになる可能性が高い。
実際、すでに発表された今年の公示地価は、全国の住宅地で3年連続、商業地では5年連続で上昇し、いずれも上昇基調を強めているとされているが、すでに市況は変化している。
路線価と、実際の市場価格が離れてしまえば、実態に合わない割高な相続税を課されてしまう羽目になるのだ。
土地を売ろうにも売れない
加えて、土地を売って納税資金を工面する場合だ。
先述のように土地を売ろうとしても、足元で売却価格の下落が起き始めている。すると、想定以上の土地を売る必要が出るなど、納税資金の確保に頭を悩ますことになるのだ。しかも相続税の納付は、相続発生日から原則10カ月以内に行う必要がある。その期間で土地を売ることを考えれば、今年に入り相続が発生した土地持ちはダイレクトに影響を受ける。
株でも同じことが言える。日経平均株価はコロナショックの前後で、一時30%超もの下落幅を見せたが、株を売って納税資金を工面する場合には大きな損をすることになる。また、遺産分割後に株価が下落したとあっては、株を受け継ぐきょうだいなどから不平が漏れ、“争族”の火種ともなりかねないのだ。