一方で野党側は受け身を強いられた。「コロナ対策は全国民一丸となって取り組む問題だから、政府与党にケチをつけにくかった。外出を自粛している有権者に直接訴える機会がなかったことも痛かった」と、野党候補の一人は語る。

 コロナ問題で世界中に不況の嵐が吹き荒れるというニュースが流れ、その状況では文政権の経済政策の失敗も全く目立たなくなった。

巧みな危機管理で存在感
政策対応の前面には立たず

 文大統領も巧みだった。

 韓国大統領は公務員であり、総選挙では中立を保つことを求められるため、歴代の韓国大統領は選挙期間中、地方視察を自粛し、目立たないよう努めてきたが、文大統領は違った。

 コロナ問題に対処するとして、4月1日に慶尚北道亀尾市の半導体製造工場を訪れ、コロナ禍でも生産を続けている企業従業員らを励ましたのをはじめ、7日に仁川国際空港の検疫現場を、9日には京畿道城南市のワクチン研究所などを訪れ、難局打開の先頭に立って取り組むという存在感を示した。

 折しも、「韓国は新型コロナ対策で良くやっている」という評価が定着したころだったため、文大統領がコロナ関連の視察をすればするほど、政府与党への好感度が広がった。

 野党内には「選挙での票稼ぎが目的では」との声が上がったが、政府与党にコロナ対策を強く申し入れているだけに、強く異議を唱えることはできなかった。

 文氏はこうしたコロナ関連の現場に足を運ぶ一方で、そうした場では、現状把握や現場関係者への激励にとどめ、具体的な政策を指示することはなかった。

 新型コロナ対策は当初は、保健福祉省の傘下にある疾病管理本部が担当したが、2月末、感染者が急増する事態になって、あらたに政府横断組織として、丁世均首相を本部長とする中央災難(災害)安全対策本部を立ち上げた。

 そして具体的な政策は、疾病管理本部の鄭銀敬本部長や丁首相が発信する形を取った。

 韓国大統領府に勤務した経験がある元政府高官は、「危機管理のやり方としてうまかった」と語る。

「新型コロナ問題は、未知との戦いだ。どんな政策が効果があるのか判断が難しい。国民がどのような反応を示すかもよくわからない。支持率を押し下げるリスクがあるときは前面に出ない方がよいと、青瓦台(大統領府)の側近たちが助言したのだろう」