300億円強といわれる男性用ヘアスタイリング剤市場で、資生堂とマンダムがデッドヒートを繰り広げている。

 ここ数年の主流だったワックス(ジェル状・クリーム状)のスタイリング剤では、豊富な品揃えを誇るマンダムがリードしてきた。

 ところが資生堂が2009年8月に発売した「ウーノ フォグバー」(霧状)が大ヒット。1カ月でなんと1年分の販売目標である240万本を売り切り、9月にはマンダムを抜いて首位に立った模様だ。

 ウーノ フォグバーのキャッチコピーは「さよならWAX(ワックス)」。その宣伝文句通り、売れ筋はワックスから霧状スタイリング剤へとがらりと切り替わりつつある。

 霧状ヘアスタイリング剤の投入は、10~20代男性の需要変化を読み取った緻密なマーケティングに裏打ちされている。資生堂の調査によれば、10~20代の男性がワックスでヘアスタイルを整えるのに30分もかかっている。ワックスでこてこてに髪型をつくるのではなく、さっと「ナチュラルでさりげないヘアスタイル」を整えたいという要望が高まっていた。

 男性用ヘアスタイリング剤の歴史をたどれば、そもそもの主流はムース(泡状)。1996年に資生堂が他社に先駆けてワックスを投入し、ムースがワックスに切り替わった。そして、今回はワックスから霧状ヘアスタイリング剤というわけだ。

 ワックス戦争では、資生堂は先行しながらマンダムに追い抜かれた。そのマンダムは急遽、霧状ヘアスタイリング剤の投入を決断。2010年2月、「ギャツビー クイックムービングミスト」をフォグバーとほぼ同じ800円弱で発売し、再び資生堂を追い上げる。

 最終的にはまたもマンダムが勝利を収めるのか、資生堂が首位を死守するのか。資生堂はこの1月からフォグバーの「詰め替え用パック」を650円前後で発売、エコに敏感なユーザーを取り込むとともに、本体(100ミリリットル)より容量を20ミリリットル減らすことで価格を約150円下げて買い替えを促進させ、2月に登場するマンダムの新商品を迎え撃つ。

 資生堂とマンダム。因縁のリターンマッチのゴングが、いよいよ鳴り響く。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田剛)

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