長友佑都
サッカー日本代表の長友佑都選手 Photo:JFA/AFLO

緊急事態宣言の発令後も新型コロナウイルスが猛威を振るう状況下で、サッカー日本代表で左サイドバックとして活躍する長友佑都が、ひとり親世帯を支援するクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げた。現在はトルコの強豪ガラタサライに所属する33歳のベテランを突き動かした背景は、自らを女手ひとつで育ててくれた母親の美枝さんを抜きには語れない。以前、美枝さんへ取材した子育て経験から、長友が抱き続ける感謝の思いの源泉を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

長友の秘めた母への想いを知り
涙が止まらなかった夜

 長男と初めて交わした携帯メールの文面を、日本から世界へ羽ばたこうとしていた長友佑都の母、美枝さんははっきりと覚えていた。メールをやり取りしたのは2002年の春。愛媛県西条市で生まれ育った長友が福岡県の強豪私立高校、東福岡へ旅立った直後だった。

「入学式を終えた日の夜に、佑都から初めてメールが届きました。感謝の言葉ばかりが並んでいるのを見たら胸がいっぱいになって、その時は『母親らしいことを何もできなくてごめんね』と返信するのが精いっぱいでした。すると、佑都からすぐに返信が来たんです」

 子育て論をテーマにした経験談を、美枝さんに聞く機会を得たのは2010年の夏。南アフリカ共和国で開催されたワールドカップで大活躍を演じ、日本代表がベスト16へ進出する原動力の一人になった長友が、FC東京からセリエAのチェゼーナへ移籍した直後だった。

 長友が小学校3年生の時に離婚して以来、美枝さんは冠婚葬祭の司会業を務めながら長友、ひとつ年上の長女、ふたつ年下の次男の3人を女手ひとつで育ててきた。「母子家庭をデメリットにはしない」を子育てのモットーとしてきた美枝さんは、長友からの返信を懐かしそうに振り返ってくれた。

「メールには『お母さんがいてくれるだけでよかったんだよ。自分がほしい物も買わずに、やりたいこともせずに育ててくれてありがとう』と綴られていたんです。仕事と子育てに必死で、自分のことを振り返る余裕すらなかった日々でしたけど、佑都からのメールを見た時には、いつも私の姿を見てくれていたんだと伝わってきました。あの夜だけは、涙が止まらなかったことを覚えています」