新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、終息にはまだまだ時間がかかりそうだ。今回のコロナ禍は「命」を含めて、医療現場や政治、社会のさまざまな局面でわれわれに「選択」を迫っている。経営学では意思決定は肝である。その状況について、医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで教える筆者が解説する。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)
コロナで「命の選択」が迫られている
アメリカ、イタリア、スペイン
新型コロナウイルスほどわれわれに多くの「選択」を迫るウイルスはないのではないだろうか?
といわれても、読者の皆様はピンとこないかもしれない。それでも「命の選択」というワードは、時々見かけるようになったのではないだろうか。
というのも、新型コロナウイルスの感染爆発が生じたアメリカ、イタリア、スペインなどの一部の地域においては、医療崩壊が発生。限られた医療資源を生かすために「誰を優先的に治療するか」という問題が発生し、すでに「命の選択」が迫られるという事態に直面しているからだ。
つまり、医療者が「この患者は助けることが可能なので人工呼吸器をつけ、この患者はもう手遅れなので人工呼吸器を付けない」などといった選択が迫られているのだ。当然、人工呼吸器をつけなければ、その患者はすぐに死んでしまうので、まさに究極的な「命の選択」である。