新型コロナウイルスの感染拡大は、経済に大きな影響を与えている。これに伴い、職を失ったり、収入が減少したりした人が「家賃」を支払えなくなるケースが増えてきている。家主側の訴訟代理人として数々の賃貸トラブルを解決に導いてきた司法書士の太田垣章子氏がコロナ禍で家主が直面している課題と、対策すべきことを解説する。
コロナ禍の「家賃滞納」で
家主の生活は守られるのか
コロナウイルス禍で、今までの生活は一変しました。人々の外出自粛が求められ、経済に極端なブレーキがかかりました。売り上げが下がり苦悩する会社経営者、先が見えないことから解雇を言い渡される被雇用者、店舗営業ができないために、収入が途絶えてしまった自営業者……。苦境に陥る人はますます増加していますが、新型コロナウイルスが収束する気配はありません。
リモートワークで対応できる業種も限られますし、しかもそのリモートワークですらできることに限界があります。リーマンショック後の不況とは比べものにはならないくらい、経済は落ち込むでしょう。世界中が不況になっている訳なので、回復には相当な時間がかかることは容易に想像できます。おそらくこの先、完全に元の生活に戻れることは、まずないのではないでしょうか。
そこで人々にのしかかってくるのが、固定費の支払いです。収入が途絶えたとしても、払わねばならないもの。その最たるものが、家賃ではないでしょうか。これに関して、アメリカやドイツなど海外では、いち早く「家賃を払わない賃借人に対し、明け渡しの手続きをすることを禁止」といった法が整えられました。この背景には、海外は日本ほど法が賃借人保護に偏っていないことがあります。
日本の借地借家法は遠い昔に整備されたもので、その後、時代が大きく変わっても、根幹のところは何も変わっていません。「家主=金持ち、賃借人=お金がない」といった、大昔の感覚をそのまま引きずっています。そのため仮に家賃を滞納されたとしても、家主側が訴訟を提起するためには家賃の3カ月分程度の滞納額が必要で、「貸主・借主間の信頼関係が破綻」しなければ裁判官は家主側に味方をしてくれません。