差別化:福祉業界のなかで「教育の専門家」として差別化

「私は教育の専門家という特色で、福祉業界での差別化を図りました。福祉関係の教育機関で講師を務める人の多くは【福祉のベテラン】で、私のように本来教育を専攻してきた者は珍しい存在だったからです。」

 こう語るのは、馬淵敦士さん。

 大阪・豊中市を中心にホームヘルパーやケアマネージャー、介護福祉士の養成学校「ベストウェイ・ケア・アカデミー」を経営しています。

 馬淵さんは奈良教育大学教育学部を卒業し、小学校と養護学校の教員免許を得ています。しかし、大学卒業と同時に、学生時代に出会った障がい者福祉のNPO法人に就職したため、教員という職業は、いったんは馬淵さんの意識からなくなったかに思われました。

「それが教育に戻ったのは、心の底に自分の本分は教育だという思いが強くあったからでしょう」(馬淵さん)。

 馬淵さんは【福祉関連の教育者】として強みを明確に打ち出し、歩み始めます。

 2007年1月に株式会社ベストウェイを設立して、ベストウェイ・ケア・アカデミーを開校すると、専任講師として教壇に立ちました。もちろん介護現場における10年間の実務経験を持ち、国家資格である介護福祉士の資格も都道府県知事が与える介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格も取得している馬淵さんです。そこに大学で培った教える能力が加わり、その指導はたちまち受講生の人気を得ました。

「よくわかる」「ていねいに話してくれる」「初心者に親切」「こんな質問してもいいだろうかという不安を持たずに相談できる」「実践講座が非常に参考になった」と、ホームヘルパー2級等の初心者受講生の反響は上々。また、実務者研修の参加者からは、後輩の指導がうまくできるようになった、上級資格試験への意欲が湧いたと感謝され、ベストウェイ・ケア・アカデミーの知名度を上げていきました。

 現在では、ホームヘルパー2級、ケアマネージャー・介護福祉士受験対策、実務者研修、介護職員基礎研修、同行援護、ガイドヘルパー、吸引・経管栄養等各種の講座を開講しています。外出介護従事者養成研修等の講座も開き、そこでも高い評価を得ているようです。

 教える技術を持つ「福祉の分野での教育の専門家」という馬淵さんならではの強みを活かした授業が、受講者の支持を得て、他校との差別化に成功しました。