‟多様性”がSDGsのゴールを
つなぐ力になっていく
実は、多様性はすでにさまざまなところでその効果を発揮している。18番目のゴールの例としてとりあげた「地方創生」「スポーツ」「エンタテインメント」における実例を見てみよう。
「地方創生」ではさまざまな施策が実施されているが、そのひとつに「地域おこし協力隊」がある。これは、地域おこしや地域の暮らしなどに興味のある都市部の住民を地方自治体が募集し、3年間程度、過疎等に悩む地域に定住してもらう制度だ。隊員は地場産品の開発や販売、農林水産業・観光業などに従事し、地域の課題解決に取り組む。隊員の募集や活動にかかる経費については国の支援があり、2018年度時点で全国1061の自治体において5530人が活動している。以前から、地域の活性化は「若者・バカ者・よそ者」が鍵を握ると言われており、地域おこし協力隊も地方に多様な人材を送り込み、地域の活性化につなげようという試みだ。スタートから10年あまりが過ぎ、課題ももちろんあるが、次第に成果が出てきているようだ。
「スポーツ」における多様性の効果としては、昨年2019年のラグビーワールドカップにおける日本代表の活躍が思い浮かぶ。代表選手31名のうち、外国籍が15名というダイバーシティなチームだからこそ、あれほどの活躍が可能になったのだろう。さまざまな国籍の選手たちが日の丸を背負い、君が代を歌う姿に感動した人も多かったのではないだろうか。多様性がもたらすスポーツの可能性がそこにはあった。
「エンタテインメント」では、日本での例ではないが、米国の2020年(第92回)アカデミー賞が参考になる。今回、史上初めて、英語以外の作品(外国語映画)である韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞し、話題となった。従来、アカデミー賞は世界的な影響力の大きさに比べて、基本的にはアメリカ国内の映画祭としての性格が強かった。しかし、2015年から2年連続して俳優部門にノミネートされたのが白人だけだったことに対して、批判が噴出。そこで、投票権のあるアカデミー会員を大幅に増やし、外国人や女性をメンバーにするなど、多様性を取り入れる自己改革を行った。今回の韓国映画の受賞もその結果の一端とも言えるだろう。多様性を取り入れることで、今後、アカデミー賞は名実ともに世界を代表する映画賞になるはずだ。
このように、SDGsを実現していくうえで、‟多様性”は大きな意義があり、17のゴールをつないでいく力として期待できるのだ。
※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」内特集《SDGsと多様性のいまを知る》PART2・PART3のテキストを転載(一部加筆修正)したものです。