薬剤師は「薬を調剤してくれる存在」から
「健康に関するトレーナー」に

 このMusubiを発案したのは、32歳の若き起業家である中尾豊さん(株式会社カケハシ代表取締役)。大手製薬会社でMR(医療情報担当者)として勤務した後、独立して起業し、他の社員と共にシステム開発に取り組んできた。

「MRとして勤務する中で、患者さんへの情報提供が不十分だと感じることが多々ありました。その第一歩として、薬剤師の業務負担を減らし、患者さんともっとコミュニケーションを図れる方法はないかと考えたのです。日本には今31万人以上の薬剤師がいますが、薬歴記録などの対物作業に時間を取られ、薬剤師本来の『服薬を通して健康指導を行う』時間が取れていません。この状況を改善するために、Musubiを開発したのです。これまでも薬歴システムはありましたが、患者さんとのコミュニケーションという付加価値を付けているところに、Musubiの特長があります」(中尾さん、以下同)

 中尾さんは起業までに400軒以上の薬局を回って丹念に業務をヒアリングしていった。その結果、業務オペレーションに不便さや、本来は薬剤師の仕事ではない雑務的な作業が数多くあったという。それらをITの力で解決していったのである。

「診療報酬の改定によって、これから薬剤師の役割は変わっていくでしょう。患者さん一人ひとりへのフォローアップが強化されることで、より丁寧な指導が期待できます。薬剤師は単に薬を調剤してくれる存在ではなく、健康に関するトレーナー的存在になっていくと思います」

 超高齢化社会に突入し、増え続ける一方の日本の医療費。この中には、飲み忘れなどで薬が余ってしまう「残薬」が年間500億円、医師の過剰処方で発生する費用が年間102億円というデータがある。薬剤師が適切な服薬指導をすることで、これらの無駄な費用を大幅に削減できるのである。薬剤師はこれからの医療のキーマンと言って過言ではない。

 現在、薬剤師を主役にしたテレビドラマも制作されている。薬局や薬剤師が注目され、その役割も大きく変わっていこうとしている。この機会に薬局とのつきあい方を再考してみてはいかがだろうか。

(吉田由紀子/5時から作家塾®)