コロナ倒産も頭をよぎったクラブ

 新型コロナウイルス禍で姿形を変えるのは、ピッチの中だけに限らない。中断期間が3カ月以上に及ぶことが確定し、広告料収入と並ぶ収入の2本柱、入場料収入が断たれて久しい状況下で、J3までを含めて39都道府県に56を数えるまでに増えたJクラブの財政も悲鳴を上げ始めている。

 Jリーグでは中断に入った直後から、再開へ向けた4つのプロジェクトを発足させている。その中には財務対応チームも含まれていて、各クラブと連絡を密に取り合っている。すぐに資金繰りに窮するクラブこそないものの、未曽有の状態が長く続けば不測の事態を招きかねない。

 4月下旬にはJクラブの定時株主総会が相次いで開催された。それと前後して、クラブのトップから切実な声が上がり始めている。例えばJ2のアルビレックス新潟の是永大輔代表取締役社長は、緊急出演した同17日の地元テレビ番組でクラブの「倒産」に言及して大きな波紋を呼んだ。

 クラブとして何も対策が講じられない状況が続けば、と前提した上で「9月から10月ぐらいにキャッシュがなくなります」と発言した中で、衝撃を伴う「倒産」の二文字が独り歩きした。心配したサポーターから自身のツイッター(@_kore_)に寄せられたリプライに、是永社長はこう返信している。

「すみません。煽(あお)るつもりはないのですが、このまま自然体で進むとそうなります、という話です」

 状況は財政規模の大きいJ1クラブも変わらず、北海道コンサドーレ札幌の野々村芳和代表取締役社長も、10月には資金繰りがショートする可能性を示唆。大分トリニータの榎徹代表取締役社長は4月下旬の段階で、地場の金融機関から融資を受ける準備を進めていると明らかにしている。

 Jリーグ本体もすでにリスクマネジメントを講じている。金融機関との間で一定の融資枠と契約期間を事前に設定し、企業側に急きょ資金調達の必要性が生じた時に枠内でいつでも借り入れられる、コミットメントラインと呼ばれる融資枠を設定することが、理事会書面決議で承認された。

 金融機関名や融資枠、期間など個別の契約内容は非公開とされているが、その後の報道で三菱UFJ銀行と政府系金融機関の商工組合中央金庫の名前が挙がっている。さらにJリーグを通じて発表されたコメントで、村井満チェアマンは契約金額についてこう言及している。

「リーグの年間予算とほぼ同額のコミットメントラインの設定を承認いただきました」

 昨年12月のJリーグ総会で承認され、執行されている今年度の予算(正味財産増減計算書)のうち、収入となる経常収益は昨年度から26億3500万円増の291億6800万円が計上されている。この金額にほぼ等しい融資枠が、2つの金融機関との間で確保されたことになる。

 予算の中の支出となる経常費用304億5900万円のうち、56クラブへの配分金の合計が151億6500万円で最多を占めている。そして、配分金の大半をJ1クラブへ3億5000万円が、J2クラブへ1億5000万円が、J3クラブへ3000万円がそれぞれ支給される均等配分金が占めている。

 均等配分金に商品化権料などを加えた金額を、通常ならば数回に分けて分割支給していたところを、希望するクラブに対しては一括で支給することをJリーグ側は決めている。もっとも、分配金を織り込んだ予算を各クラブも編成しているので、一括支給されたからといって、コロナ禍を乗り切ることは難しいだろう。

 シーズン中にクラブが財政難に陥った場合に備えて、Jリーグではリーグ戦安定開催融資規定がすでに設けられている。そして、村井チェアマンをして「国難」と言わしめた新型コロナウイルス禍においては、この規定を時限的な特例として運用することもすでに決めている。

 従来のリーグ戦安定開催融資規定は返済期間が1年で、勝ち点の剥奪などのペナルティーも設けられていた。一転して新設された特例措置では、新型コロナウイルスの影響を被るクラブに対して、均等配分金を上限として無担保かつペナルティーなしで、返済期間も3年として特別に融資する。

 J1は18、J2は22、J3は16のクラブを数える今現在では、満額融資された場合には114億8000万円が必要となる。分配金と特例融資の合計で、最高で266億4500万円に達する。加えてクラブごとの状況によってはさらに多くの緊急融資が必要とされる場合にも即座に対応できるように、コミットメントラインをも設定したわけだ。