官僚が強大な権力を行使できる審議会
専門家は「お墨付き」を与えるだけ

 政策立案において、首相官邸・内閣府の主導が強まっていることは、かねて指摘されてきた(第183回)。しかし、官邸・内閣府が扱う政策案件は全体のごく一部で、政権が支持率を高く維持するために最重要と考える案件だけだ。首相側近の加藤勝信氏(現厚労相)が、かつて「一億総活躍相」など、一見、まったく関連性のなさそうな7閣僚を兼務したのは、世論に受けそうな政策をタイミングよく繰り出すことを政権が何より重要と考えていたためだ(第163回・P3)。

 一方、大多数の政策は首相官邸や内閣府が関わることなく、粛々と各省庁で立案され、実施されているのが実態だ。そして政策立案の始まりは、各省庁に設置される「審議会」である。そこに委員としてかかわるのが「専門家」だ。

 筆者は、かつてこの審議会について論考を書いたことがある(前連載第20回)。小泉純一郎政権期の2004年に成立した「年金改革法」についてだ。

 当時、経済財政諮問会議の委員であった大田弘子氏(現・政策研究大学院大学特別教授)が著書『経済財政諮問会議の戦い』で、「2002年12月に厚労省から諮問会議に改革のたたき台が出た時点で、制度の抜本改革が却下され、現行の制度体系を基本として改革を進めると決められていたこと」を問題視していた。

 大田氏は、「制度の抜本的改革には、諮問会議で審議する前に厚労省の審議会・社会保障審議会年金部会でそれを議題として取り上げておかなければならなかった」と指摘している。厚労省が都合の悪い改革案をたたき台に載せなかったので、議論のしようがなかったというのだ。

 大田氏の回想は、政策立案過程で「議題設定」の権限を持つ者が極めて大きな権力を行使できることを指摘している。自己に有利な争点だけを選別して政策決定プロセスに持ち込むことができるからだ。

 各省庁の審議会では、事務局を務める官僚が議題を設定し、専門家を参考人として招致。彼らの意見を聞き、質疑応答の後に議事録を作成して次回の議案を作成する。審議会の委員は、実質的には質疑応答に参加するだけ。要は、官僚が完全に議論をコントロールしているのだ。

 審議会で委員に求められる役割とは何か。筆者が英国に留学中、在外研究で英国に来ていたある経済学者に会ったことがある。彼は、政府の審議会委員の経験について「学者の役割は、官僚がやってほしいことにお墨付きを与える助言をしてあげることだよ」と言い切っていた。

 故に、委員には現在の世界最先端の研究に携わっている若手が起用されることはほとんどない。学会等の推薦によって、かつて大きな業績を挙げた重鎮の学者が起用される。彼らは「御用学者」と呼ばれることがある。