新型コロナウイルス災禍による混乱の先に来る“アフターコロナ”の社会は、今までとはかなり違うニューノーマルになるだろう。しかし、その中身は今は誰にも分からない。既成概念にとらわれずに、新しい社会をつくるしかない。すなわち、あらゆる国、社会、産業でイノベーションが求められているのだ。そして、その主役は若者だ。
若者に、新しい時代を築くイノベーションを起こす力を身に付けてもらうために、シリコンバレーから学べることは多い。シリコンバレーの特徴は、オープンなコミュニティー、失敗を恐れず果敢に挑戦する文化、失敗しても敗者復活が可能な寛容性、ハイリスクのスタートアップ企業に資金を提供する仕組みなどのエコシステムだ。しかし、イノベーションのための根本的な力は、エコシステムにあるのではない。そこに集う人々の心の中にある。
シリコンバレーは場所のことではなく、“State of Mind”、すなわちわれわれの精神にあるのだ――。私のかつてのボスで、「シリコンバレーをつくった25人」のうちの一人に数えられるレジス・マッケンナは、よくそう言っていた。だから、若者へのイノベーション教育は、個々人の心深くに根付かせる、精神を確立させるような内容でなければならない。では、その精神の本質は何だろうか。