ソフトバンクグループ(SBG)がコロナショックを受けて凍結していた投資事業を中国で再開した。だが、かつてのような大盤振る舞いで強気の勝負を仕掛けるのは難しい。巨額赤字を生み出した「ビジョン・ファンド」の苦難は続いている。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
中国市場でそろりと投資を再開した
孫氏の「ビジョン・ファンド2」の実態
「この資金調達は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導した。中国の自動運転分野で最大規模のものだ」
5月29日、中国の配車サービス大手の滴滴出行(DiDi)は、自動運転技術を開発する傘下企業が5億ドル(約540億円)の外部資金を初めて調達したと発表した。
そこで名が挙がったビジョン・ファンド2とは、10兆円規模で先端テクノロジーのスタートアップ企業に投資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド1」に代わって19年10~12月期から新たに運用を開始した2号ファンドを指す。だが、1の成績不振で2号ファンドには外部投資家の資金が集まっていないため、SBGの自己資金のみで投資活動を行っているのが実態で、投資規模は3月末で約2000億円にとどまっている。
20年1~2月にかけて、人口肉培養企業の米メンフィス・ミーツ、オンライン薬局の米アルト・ファーマシー、医療診断サービスの米カリウス、人工知能(AI)による従業員監視ソフトを手掛ける英ビハボックスなど数社に投資したが、3月に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場が混乱したため、新たな投資は凍結されていた。
それが、5月に入って状況は変わったようだ。コロナ禍のピークが過ぎたとされる中国市場で、孫正義氏のビジョン・ファンド2が新規の投資活動をそろりと再開した格好だ。