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コロナ禍を受け、ソフトバンクグループの10兆円ファンド、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが1兆8000億円もの巨額損失を計上することが明らかになった。ファンドの主たる投資先である企業価値10億ドル(約1070億円)以上のスタートアップ企業「ユニコーン」に何が起きているのか。特集『ソフトバンク巨額赤字の惨禍』(全6回)の番外編として、米シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)ファンド、WiL(ウィル)の伊佐山元・最高経営責任者(CEO)のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ソフトバンク10兆円ファンドが
ユニコーンバブルに「油注いだ」

――ソフトバンク・ビジョン・ファンドがコロナショックで巨額赤字に陥っています。巨大ファンドの出現とともに、ユニコーンが「バブル」化していくまでの過程を、米シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)としてどう見ていたのですか。

 グローバルレベルで低金利が過去20年続いたことを背景として、VCが大型化していましたし、ヘッジファンドや投資信託に続いてコーポレート・ベンチャーキャピタルという事業会社も続々とベンチャー市場に参入してきたことで、偏ったお金がユニコーンに一斉に流れ込んだのだと思います。

 盛り上がっている市場にいろいろな人が参加して、そこで何かの事故が起きてボンとはじけるという現象が10年周期で起きているのがシリコンバレーのテクノロジーの業界です。1990年代のITバブルのときもそうでしたし、2008年のリーマンショック前もそうでした。今回もそういう意味で、ビジョン・ファンドは非常に目立ちました。

 ソフトバンクは80年代からベンチャー投資をしているのですが、単に事業をやってもうけるというモデルから、ビジョン・ファンドを始めたことでファンドの収益を事業体に取り込むというところまで踏み込んだ。いわゆるウォーレン・バフェットモデルで、投資のポートフォリオによってもうけるという孫さんならではの戦略がみてとれました。

 僕はビジョン・ファンドが出てきたことを非常に面白いと思いました。今までシリコンバレーのVCファンドを牛耳っていたのは、すべて欧米人、特にユダヤ系の人だったのに、そこへアジア人の孫さんが桁違いのファンドを立ち上げて殴り込みに来た。シリコンバレーから見れば、外国人として、日本人の意地を見せたかなという意味ではグッドニュースでした。

 一方で、起業家にとっては孫さんみたいな人が現れて、白人エリートのファンドに行くよりもビジョン・ファンドに投資してもらおうかという選択肢もできた。つまり、ハングリー精神の塊の起業家にとってハングリー精神の王様みたいな孫さんが巨大なファンドを引っ提げてやって来た。そういう意味では、すごく盛り上がりましたね。

 こうした盛り上がりの中で、火に油を注いで、バブルとなってユニコーンでは足らず、企業価値100億ドル(1兆0700億円)以上のデカコーンが次々に現れるということで相当な過熱感が出てきた。この市場の投資の桁が変わってしまったのが、ビジョン・ファンドが参入したことで起きたオーバーシュートというか、最後のバリュエーションの上昇だったのではないかなと思います。