オフィスの感染対策
消毒剤噴霧・空間除菌は一考にも値しない
――オフィスの感染対策として、どのようなことを徹底すべきか。
新型コロナウイルスの場合、症状が全員に現れるわけではなく、無症状でうつす可能性があるために、潜在的に感染者がいることを想定した対策が必要になる。
具体的なリスク回避策は、2つの感染経路から考える。唾などが飛ぶ「飛沫感染の対策」と手などが汚染される「接触感染の対策」だ。
飛沫感染は、人が集まり、人との接触が近い状況が何よりも危ない。これを避けるために、対面会議を減らす、休憩時間に時差をつける、議論は衝立越しに行う。とにかく1対1の接触を減らし、オフィスの人員を増やさず、出勤時間をずらす、換気を良くするのも大切だろう。
接触感染は、汚染された手で顔を触ることがとにかく危ない。汚染される可能性のある共用部位の消毒、共通のものを使用しないように、例えば食事を一緒にする機会を減らす、それぞれが手を洗う習慣をつける。基本的なことを間断なく行うのが効果的だ。
――消毒剤の噴霧や空間除菌の実施については、どう考えるべきか。
これは飛沫感染と接触感染の2つの感染ルート、いずれも断てないため、一考にも値しないというのが答えになる。
飛沫は、人から人へ瞬間的に飛ぶ。もし私が目の前でくしゃみをすれば、0.1秒後にしぶきは目の前の相手の鼻の中だ。わずか0.1秒で飛ぶものを、「空間除菌」で「除菌」などできない。手が汚染された場合は、手全体に消毒液をつければ効果的だが、霧状ではウイルスが半分になったとしてもすべては死滅せず、顔を触ってしまったら感染する。
そもそも安全性も確認されていないため、先ほど述べた2つの感染ルートを断つ基本的な対策が望ましい。
――日本でも第2波の発生が懸念されている。どこまで警戒すべきか。
第2波に備えて、感染ルートを断つ行動をし続けなければならないが、だからといって、過剰に接触を避ける、いつまでも外出制限を続ける必要はない。感染の火種を早く見つけ、発症した時点で早く抑えることが重要で、全体を同じように規制すべきではない。
接触対策を行った上でのちょっとした外出は、リスクが低い場所に関しては問題なく、すべての人が閉じこもるアナグマ生活は行き過ぎだろう。