その象徴が、全中会長の中家氏(70歳)が自らの2期続投を可能にするため2月に行った定年延長である。全中会長就任時の年齢制限を「70歳未満」から「70歳以下」に緩和したのだ。

 全中が会長の定年延長を決めた直後、共済連や全農でも同様の年齢制限の緩和を行った。

 農協の組合長は家柄の良い地域の名士が選ばれがちなため、組織内の政権交代は起こりにくい。そのため放っておけば70代以上の老害リーダーがポストに居座り続けてしまう。これではいつまで経ってもポストが空かないので新進気鋭のリーダーは生まれないし、組織の変革は望めない。

 そうした“老害”を防ぐために、2005年就任の全中会長は「75歳未満」、11年就任の全中会長は「70歳未満」などと年齢制限を厳格化してきた。全中自身が健全な若返りを図ってきた途上だったのに、中家氏が改革を逆行させてしまったのだ。

 これまでも、会長の定年を延長したいと考える農協組織のリーダーは多かったが、我田引水の提案をするのは憚られるため全国的な動きにはなっていなかった。

 だが、全中というトップ組織の定年延長に「勇気」を得て、秋田県や佐賀県で会長の年齢制限の緩和・撤廃が企てられるなど組織の老衰危機が高まっていた(過去記事『JAグループ「老衰」危機、役員定年緩和で70代会長大増殖の末路』で詳報)。

 老衰危機にトドメを刺すともいえる出来事が、京都中央会の中川氏が5月30日の近畿地区中央会会長会議で共済連会長への立候補を宣言したことだった(同会議で中家氏も全中会長続投へ立候補を表明)。

 中川氏はその場で「全中の中家会長と二人三脚で頑張る」と発言したという。中川氏は全中会長選が行われるたびに暗躍し、選挙結果を左右するパワーを持つといわれており、その集票力は侮れない(ただし、クセが強いために一定数の“反中川票”もある)。

 ただ、中川氏の「二人三脚」発言には違和感を覚える農協関係者は少なくない。なぜなら同氏は中家氏が進めた定年延長に反対の論陣を張ってきたからだ。