小池がもっとも隠しておきたかったと
思われる経歴の決定的な証言

 小池の経歴は華やかだ。「芦屋の令嬢」として生まれ、「カイロ大学を首席で卒業」後、テレビキャスターを経て、平成のはじめ、戦後の55年体制が軋みを立てて崩れ始めたのに歩を合わせるように政治家に転身。浮き沈みの激しい政界で常にスポットライトの当たる場所を歩いてきた。時代とともに権力者の顔ぶれは替わっても、その時々の実力者の傍にいつも彼女の姿があった。そして2016年、小池はついに東京都知事の地位に登りつめる。総予算13兆円。国家並みの予算規模を誇る巨大都市の舵取りをする最高権力者の座をつかみとったのだ。

 著者が小池と向き合うきっかけとなったのは、月刊誌からの原稿依頼だった。『おそめ』や『原節子の真実』などを読んだ人はご存知だと思うが、著者は徹底した取材で知られる。いつものように資料を集め、じっくり読み込んだところ、おかしなことに気づいた。小池が自著で書いていることや語っている内容に、辻褄の合わないことや矛盾する点がいくつもあったのである。次々と湧き上がる疑念は、やがてひとつの形を成す。それは、彼女が嘘をついているのではないか、という疑惑だった。

 なにしろ「芦屋の令嬢」というところからして怪しい。小池自身、雑誌の取材などで「私が芦屋令嬢だった頃」などと語っているが、生まれ育った家は豪邸エリアにはなかった。小池家を古くから知る人によれば、一家は「見栄張り」だったという。金がなくてもあるかのように振る舞う。小学校の同級生は、「どんなお金持ちの子どもよりもお金持ちのお嬢さんに見えた」と語っているが、小池の洋服は、神戸の高級子ども服「ファミリア」を真似て、母親が手作りしたものだったという。

 この時代のエピソードには切ないものが多い。本書は小池の「右頬のアザ」についても触れている。「子どもの頃から、人の顔色を見る癖があった」小池だが、それは他人が自分の顔を見た時にみせる表情に敏感にならざるを得なかったからではないか。また常に他人の視線に怯え、傷ついてきたことが、彼女の尋常ならざる上昇志向の原動力になっているのかもしれない。小池の心情に寄り添うこうした著者の想像力は、本書に深みを与えている。

 本書の最大の読みどころは、小池がもっとも隠しておきたかったと思われる経歴、すなわち謎に包まれた留学時代を、関係者の決定的な証言をもとに検証した部分だろう。