韓国を自陣に引き込む
トランプ大統領

 文大統領は、米中対立の先鋭化にも対応しなければならない。

 特に、米国は韓国を自陣営に引き込み、対中包囲網を強化しようとしている。米国のトランプ大統領は9月に予定するG7サミットに韓国を招く意向を示した。サミットには、対中関係が悪化しているインド、オーストラリアも招かれる。ある意味、G7への参加は、韓国が中国と距離をとり米国に従うと“踏み絵”を踏まされることに等しい。

 足元、米国のある世論調査では、大統領支持率が38%にまで低下した。背景には、コロナショックへの対応のまずさ、失業の増加、人種差別問題の深刻化などがある。トランプ氏は大統領再選にかなりの危機感を強めているはずだ。トランプ氏は、対中批判を強める世論や一部の共和党保守派層からの支持をつなぎとめるために、対中強硬姿勢を強めざるを得ない。

 そのために、米国はファーウェイへの禁輸措置を強化した。これまで、米国は外国製の半導体に関して、米国が生み出した技術、ソフトウェアの用いられた割合が25%以下であれば、禁輸の対象としてこなかった。今後、米国は自国由来の技術やソフトウェアの割合が25%以下であったとしても、ファーウェイへの輸出を禁じる。9月には台湾のTSMCがファーウェイからの受注を止める方針だ。

 半導体の生産能力が十分ではないファーウェイは、韓国の半導体業界などに協力を要請している。ただ、対中強硬論に傾く米国がサムスン電子とファーウェイの取引を容認するとは考えられない。

 その状況下、文政権が自力で中国との関係維持を目指すことはかなり難しい。韓国は、国内独自の技術や材料ではなく、わが国に依存して半導体を生産して中国などに輸出し、景気を支えてきた。

 それに加えて、経済運営に必要な資金の調達に関して、韓国は米国からのドル資金供給に依存している。安全保障面においても韓国は米国に依存している。文大統領が経済成長のために中国の方を向こうとすることは、一段と難しくなっている。世界全体で考えた時、韓国は米中対立の先鋭化から最も大きな被害を受ける恐れがある。

韓国はわが国にとって
ただの“他山の石”にあらず

 わが国は韓国が直面する状況を他人事で済ませてはならない。わが国は、米中両国からリスペクトされる立場を築かなければならない。

 韓国からの留学生などと話をすると、彼らの多くがわが国での就職を希望していることに気づく。その理由の一つは、サムスン電子への就職が極めて難しいからだ。韓国最大・最強の企業であるサムスン電子への就職は、韓国の若者にとって「幸福な人生を送るモデル」なのだろう。

 当初、文大統領は財閥解体を掲げ、幸福のモデルを崩そうとした。経済状況が厳しくなると、文氏はサムスン電子に秋波を送り始めた。一貫性を欠く文大統領が、国民からの支持を増やすとは考えづらい。世論を一つにまとめられない文大統領が、構造改革を進め、産業構造の多様化を進めて、サムスン電子1社に依存した経済運営を改めることは難しいだろう。