専門家を使いこなす
専門家が必要
危機発生時に必要以上のダメージを受けないためには、初動が肝心なことは言うまでもないが、3つのアクションが必要になる。1つは、問題収束アクションだ。まず何が起こったのかという事案調査を行い、根本的な原因の解明や類似事例の可能性の精査を行う。場合によっては調査委員会を立ち上げる必要もあるだろう。さらに再発防止策の策定に当たっては、問題の本質を見極め、原因や動機までを徹底的に調査・分析する必要がある。
2つ目は、経営安定化アクション。問題事案の発生によって、どのような経営ダメージを受けるのかを整理することが必要になる。ビジネス上の信用を失い、場合によっては製品の出荷停止に追い込まれることも考えられるだろう。賠償費用などが発生した際に、経営上の損益、資金や資本に対するインパクトをきちんとシミュレーションし、資金不足が予想されるのであれば、保有する資産を売却したり、場合によっては金融機関に資金調達を相談することも必要だろう。
3つ目が、社内外のコミュニケーションだ。取引先をはじめ、マスコミ、株主、監督官庁、金融機関、監査法人、内外の司法当局、従業員など、さまざまなステークホルダーが存在する。誰もが「最新の情報」を要求してくる中で、誰に、どういう順番で、どのような情報を流すのか、細心の注意が必要だ。
これら3つのアクションは、混然一体となって同時並行で行わなければならない。その結果、危機対応に当たっては、経営・法務・財務の3つの領域で膨大なタスクが発生するが、短期間で柔軟かつ連携しながら進めていく必要がある。繰り返しになるが、これに対処できるリソースを有している企業はないので、必然的に外部の専門家を起用することになる。
経営・法務・財務の専門家を束ね、最終的な意思決定を行うのは経営トップの仕事だ。その役割は、さしずめ「オーケストラの指揮者」といったところだろうか。バイオリンだけがいい音を出していても、演奏が成り立たないように、あらゆるパートに目を配りながら、全体としての調和を図り、目指すところに向かう必要がある。経営トップがその役割を果たすことが難しい場合は、“専門家を使いこなす専門家”を外部から探してくることも考えないといけない。【完】
AKINA KOZAKAI
専門は、企業の事業構造改革、事業再構築、不振事業のターンアラウンド、危機対応。またM&A、資金調達、法的手続きなどの財務ストラクチャーについても経験多数。近年は、日系企業の海外現地法人の再構築に多く関与している。
GO OTSUKA
専門は、危機対応、不祥事対応、フォレンジック。ビジネスコンサルティングの経験に加え、総合商社の社内弁護士としてさまざまな事業分野における事業投資案件や危機対応、不祥事対応などの実務経験を有する。近年は品質不祥事、会計不祥事への対応に多く関与している。
- ●企画・制作:ダイヤモンド クォータリー編集部