一方GATEは、大企業を対象に新規事業の開発やイノベーションの創発を支援されています。
山根:社長の髙橋誠も言っていますが、技術革新の動きがこれだけ激しい時代にあって、従来のNIH(自前主義)では脱落してしまいます。やはり他社と共創しながらサムシングニューを追求するオープンイノベーションが必要です。これと並行して、「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)を推進することも不可避です。
IT革命といわれてすでに四半世紀が経ちました。その間、さまざまなスタートアップが台頭し、かつての優良企業を凌駕していったのは、ご承知の通りです。こうした新しい現実を目の当たりにしながら、日本はオープンイノベーションにもDXにも足踏みしてきました。しかしここ数年、我々のお客さま企業の間で危機感が急速に拡大しており、このような声に応えるためにGATEをつくりました。
単なる場に留まらず、デザイン思考やアジャイル開発といったスキルや方法論の指導・提供も行っています。
山根:どちらもいま流行りのものですが、特にアジャイル開発は、我々が試行錯誤の末にたどり着いた結論です。
いま振り返ってみると、KDDIは、その沿革が示しているように変化の連続でした。そもそもの出発は通信キャリアでしたが、非通信分野でさまざまな企業と協業しながら、新しい製品やサービスを開発してきた歴史があります。
実は、5年ほど前までは、企画は社内で行うものの、開発や構築はシステムインテグレーター(以下SIer(エスアイヤー))に外注していました。ほとんどのSIerは、システムの要件定義から設計、製造、テストまで、段階的に開発を進めていくウォーターフォールモデルです。そのため、サービスリリースまでに、早いものでも半年はかかり、けっこうな時間になります。その結果、企画した時点と比べて外部環境が変わっていたというケースも少なくなく、価値あるサービスをいかにスピーディに開発するかが常に悩みの種でした。
そこで導入したのが「アジャイル開発」、なかでもジェフ・サザーランド氏が提唱した「スクラム」というアプローチです。本来はソフトウェア開発の手法でしたが、いまではそれ以外の分野にも応用されています。
この手法によってサービス開発を内製化することで、1〜2週間の単位でサービスを開発し、これをお客さまに使ってもらい、フィードバックを得ながら適宜改善を施していきます。アジャイル開発のおかげで、価値がなく、使われない機能の開発を極力回避すると同時に、より付加価値の高いサービスを短期間でつくり込むことが可能になりました。
こうしてサービス開発の内製化で培ったアジャイル開発のノウハウやドゥハウを、自社内だけに閉ざしておくのはもったいない、より多くの、そしてさまざまな方々にこの手法を知っていただこうということになり、お客さま企業に提案したところ、我々同様、ウォーターフォールモデルに課題を感じており、アジャイル開発に強い関心を示されました。
その一方、DXの機運の高まりもあって、アジャイル開発のみならず、新規事業開発やイノベーション、そのためのテクノロジーの知識やスキルの習得、スタートアップのような起業家文化の醸成といったニーズが高じていることもわかりました。GATEを立ち上げたのには、このような背景があったからなのです。