アラブ最高峰のカイロ大は留年も当たり前
腐敗、日本政府の援助を見据えた思惑も
早川さんはこうした小池氏とのカイロでのやり取りを、自身の母への相当量の手紙で克明に記しており、取材時にはそこから記憶を想起してもらって話を聞きました。小池氏が後半生に日本で大臣、そして東京都知事となったことに恐怖心を感じておられました。そんな小池氏の秘密を自分だけが知っているという不安に加え、エジプトは軍事独裁国家であり、小池氏とアラブ世界とのパイプを考えれば、命を狙われるリスクもゼロではないと考えていたからです。
ただ早川さんには、小池氏を憎いと思う気持ちはなく、経歴を詐称したことが憎いので、これを償ってほしいと考えていると話しておられましたね。
――早川さんの証言によると、カイロ時代の小池氏は遊びやアルバイトに熱心で、アラビア語の読み書きは超初歩レベルと、とても熱心に勉強をしていたふうではない。にもかかわらず日本ではカイロ大学“首席卒業”と自称してキャリアを積んできました。今年6月8日には在日エジプト大使館がカイロ大学長の声明として、小池氏がカイロ大を卒業したのは事実だとする声明を出しました。
そもそもカイロ大はアラブ世界の最高峰の大学であり、卒業するのは非常に難しい。4人に1人は卒業できないと当の小池氏自身が過去に語っています。アラビア語のネイティブでない日本人であれば、死に物狂いで勉強しても、留年を繰り返して何年もかけて卒業するのがやっとで、できない人もたくさんいます。まじめに勉強していなかった小池氏が首席で、4年で卒業できたとは考えられません。
小池氏は、父の勇二郎氏と、エジプトの副大統領などを務めたアブドゥル・カーデル・ハーテム氏とのコネによってカイロ大の2年生に編入できたようですが、進級できず落第し、卒業はできなかった。
ではなぜ、カイロ大があのような声明を出したのか。エジプト社会は腐敗が多く、いわばその人の社会的地位に合わせて恩恵が受けられる国です。またエジプト政府は日本から多額のODA(政府開発援助)を受けており、日本政府や小池氏とのパイプを政府も重視していることでしょう。現在の小池氏の地位や権力を考えれば、カイロ大は小池氏が卒業生であることをむしろ利用したい、という思惑があるのではないでしょうか。