助けを求める人々を足蹴にしたくなる心理
“芦屋令嬢”を演出しても出てしまう地金

 二つ目は、彼女自身が苦労してはい上がる人生を歩んできたため、立場の弱い人から頼られると、手を差し伸べるよりも、むしろ足蹴にしたくなるのではないか。芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」のように、下から糸につかまろうとする人を振り払おうとする心理に駆られるのではないでしょうか。

――阪神・淡路大震災の被災者の訪問を受けた際に、指にマニキュアを塗りながら応対し「塗り終わったから帰ってくれます?」と言い放つエピソードも出てきます。私も小池氏本人に16年11月にインタビューした際、iPadを操作しながら目を合わせることなく生返事を続けられたことがあるので、こうした言動は十分に想像できます。小池氏のそんな一面はあまりメディアで取り上げられませんね。

 小池氏はテレビカメラが回っているなど公の場所と、そうでない場所での振る舞いが大きく違います。北朝鮮による拉致被害者の家族の記者会見に付き添った際など、自分がいかにも良心がある人物であるかのように振る舞うことはとても上手です。

 記者会見でも「○○と存じます」などと丁寧さをやたら強調した言葉遣いをします。“芦屋令嬢”的なイメージを意識しているのでしょう。しかし、いざ自分に不利な質問が出ると、手元の資料を束ねて机にたたきつけてバンバン音を立てるなど、途端に豹変する。“地金”が出てしまうのです。

 小池氏の周辺を取材して感じたのは、本人は学ぶ力、思考力が乏しいのに、複雑な物事をさも十分に理解しているように自分を見せる力だけは抜群に高いことです。多くの人々は小池氏のそうした虚像だけを見ているわけで、それが怖い。

 小池氏が07年にわずか55日間、防衛大臣を務めた際の事務次官だった守屋武昌氏は、私の取材に「小池氏は防衛政策を理解していないのに、記者会見では、さも中身を理解しているように話す。鋭い質問には論点をそらした上で、さも堂々と答えていた。中身を学んでくれればとレクチャーの時間を取ろうとしても、雑誌のグラビア撮影やテレビの取材を優先するので時間を取れなかった」と話していました。

――とりわけ防衛大臣ともなれば、それは極めて危険ですね。