エボラは感染者を隔離して感染地を封じ込める対策が取られた。死亡率が高いので、拡散するには限度がある。

 しかし、エイズは感染者が発症せずに自覚のないまま長期間にわたって人と接触する。性交渉の相手が感染しているかもしれないし、母親が感染すれば授乳もできなくなる。病院や診療所での処置にも気を使わねばならない。

 これらのウイルスと比べると、新型コロナウイルスはもっとしたたかである。感染力はエボラ並みに高く、潜伏期は2週間ほどだが発症しない人も多く、致死率もせいぜい2割程度である。

 これはパンデミックになりやすい特徴だ。

 自覚症状もないままに感染者が人々と接触し、せきやくしゃみによる飛沫によって感染を拡大させていく。

 中国・武漢で発生して以来、3カ月もたたないうちに世界中に広がってしまった。これは、現代の人々が集まりやすく、頻繁に長距離を移動する傾向を高めたことによる。まさに新型コロナウイルスは現代のグローバル社会に見事に適応しているのだ。

人類は信頼の仲間を増やして進化
「3密」で信頼関係作ってきた

 ウイルス感染症に対処するには、自然に免疫ができるのを待つか、ワクチンを開発して抗体を作るしかない。

 今、科学者たちは総力を挙げてワクチン開発に取り組んでいる。しかし、ワクチンができたとしてもインフルエンザのようにウイルスが変異すれば効かなくなる。これから、今回と同じようにしたたかなウイルスが出現することを予期しながら、人々の暮らし方を変えていかねばならない。

 それはどのような影響を人々にもたらすのだろうか。

 人類ははるか昔から、信頼できる仲間の数を増やすように進化してきた。なるべく分散して採食するサルや類人猿と違って、人間が集まって食事をするのも、共同で育児をするのも、共感力を高めて社会力を強化することにつながった。

 人間の脳は仲間の数を増やして社会的複雑さに対処するように大きくなったという仮説がある。しかも、言葉は脳が現代人並みに大きくなってから登場したので、社会脳は言葉以前の濃厚接触によるコミュニケーションによって育てられたと考えられるのだ。

 言葉は信頼関係を拡大することには大して役立っていない。信頼できる人の輪は、いまだに農耕・牧畜が登場する前の狩猟採集時代の150人を大きく超えてはいない。

 言葉は情報社会をもたらして集団の規模や交信できる人の数を拡大したが、人々が安心して頼れる人の数は増えてはいないのだ。