アプリの開発に携わったのは、日本マイクロソフトに所属する廣瀬一海さん。エンジニア界隈では「デプロイ王子」の異名で知られる有名人だ。廣瀬さんが動きだしたのは、3月半ばだったが、思いつきではなく、経験に裏付けされた動機があった。

――なぜ廣瀬さんは接触確認アプリを開発しようと思ったのですか?

廣瀬 20年ほど前、エンジニアとして駆け出しの頃、日本医師会総合政策研究機構に所属して医療・介護用ソフトなどをつくっていました。その頃に公衆衛生について勉強して関心があったということもあり、新型コロナウイルスの感染状況についてはかなり心配していました。

 何かできることがないかと思っていた中、3月にシンガポール政府がコロナ感染追跡アプリをリリースしました。シンガポール政府は、元々管理国家ともいわれていますし、不透明な部分があります。

 医療用ソフトをつくっていた身として、医療は透明性が不可欠と思っています。透明性が担保されたアプリがあれば、他の国でも使ってもらえるのではないかと思いました。本当に趣味で、世界のどこかで使ってくれる人がいたらいいなあというノリで始めたんです。

 ただ、正直誰かに託したかった(笑)。誰かが動いてくれることを期待したんですが、誰も最初は動かなかったので、知人に声をかけたりFacebookなどで広く呼びかけたりして、日本在住の5人のコアメンバーと一緒に進めていくことになりました。

 コアメンバーの中には、外部との交渉などを担当するメンバーもいる。安田クリスチーナさんだ。安田さんは米国のマイクロソフトに所属し、開発者のリレーション業務を行っている。

――廣瀬さんも安田さんも同じグループ企業の社員です。会社でプロジェクトを立ち上げた方がいろいろと円滑だったのではないですか?

安田 マイクロソフトという会社として製品を出すのは実際とても難しいです。基本的に外資系企業ですし、アプリを出すということはありません。

廣瀬 会社として何かをやるということは全く頭になく、在宅勤務でしたし、医療に対する自分の思いがあったので始めたものです。