大手新聞社だって同じことをやります。デヴィ夫人の脱税疑惑を書いたときも、発売前日に、すでにデヴィ夫人のコメントが掲載された記事が出ていました。

 問題はそれがどれだけ悪いことか、彼らがわかっていないということなのです。芸能記事くらいなら、これは雑誌のスクープだと読者がわからない、あるいは雑誌を買ってもらえない程度の実害です。しかし、政治家とか官僚の問題を報じるときは、それでは済みません。発売前に証言者への圧力がかけられたり、証拠隠滅や記者会見を先に開いての否定だったりということが、平気で行われます。

 新聞社が、権力側の手助けをしていることに気付いていないのです。

 そのため雑誌側は、こんな手段をとりました。新聞は、雑誌が広告で使う言葉が適切かどうかを点検しているだけです。「ならば」と主人公の名前を変え、顔写真も変えたダミー広告を提出するのです。もちろんデザインは複雑ですから、大きな変更はできませんが。

 当時ですと、有力政治家に何人か3 文字の名前がいました。菅直人、古賀誠、山崎拓、森喜朗。この4人を書くときは、わざと違う名前の3文字に変え、顔写真も変えて新聞社に提出するのです。

ダミー広告情報を入手して
クレームを入れてくることも

 なんだか子どもだましのように思うでしょうが、これが結構有効でした。

 あるとき、全然取材もしていない、記事も書くつもりがない政治家から内容証明が届きました。「貴誌が自分の不倫報道をしようとしているが、そんな事実はない。掲載したら、すぐに名誉毀損で訴える」というものです。

 実は、ダミーでこの政治家の名前を新聞社に送ったので、それを誰かがチクったのでしょう。発売当日、政治家の顧問弁護士に電話をしたら、「おかしいなあ、ウチの先生は誰から聞いたんだろう」……。