東京フィル演奏再開の裏側、ステージ上で「密」を避ける工夫とは?
再開した東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会(6月21日東京・渋谷のオーチャードホール 指揮・渡邊一正氏) 撮影:三浦興一/提供:東京フィルハーモニー交響楽団

東京フィルハーモニー交響楽団(東京フィル)が6月21日、22日、24日の定期演奏会から、ついに聴衆を会場に入れた定期演奏会を再開した。全国のオーケストラや吹奏楽団など、数十人規模の演奏団体は練習も本番も停止しているだろうが、6月19日のイベント開催制限の緩和以降、徐々に演奏会場や練習場が再開しているので、演奏団体側も全体練習や公開演奏会実現の模索を始めている。難関は聴衆の密集よりも、舞台上の密集対策だ。東京フィルの再開は多くの演奏団体にとって、ウィズ・コロナ時代の演奏活動の参照基準になると思われる。(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

2管編成12型の「新世界」で再開
選曲にもコロナ対策

 政府や東京都、施設などのガイドラインによって、会場は定員の半分以下にして空席を半分設けることになっている。東京フィルの実際の集客は半分以下だったから、密集、密接のリスクは皆無だった。聴衆の検温、手指消毒を行い、チケットやプログラムの手渡しを止め、連絡先を記入させるといった対策も取っていた。開場時刻を開演1時間前にして入場を分散させ、退場も時間差にするなど準備万端だったが、これらは映画館などほかの業態の集客時にも行われていて、ほぼ定着している。

 映画やクラシック演奏会の聴衆は前を向き、声を出すわけではないのでもともとリスクは低い。問題は舞台上のメンバーの配置である。クラシックのオーケストラや吹奏楽団は、とにかく人数が多い。したがって毎年夏休みに開催される全国規模の吹奏楽コンクールは密集によるリスクを理由に中止が決定している。

 今回は、聴衆ではなく演奏する側のリスク管理を東京フィルの実践から見てみることにする。

 オーケストラの演奏曲目でいうと、非常に集客力のあるワーグナー、マーラー、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウス、ラヴェル、ストラヴィンスキーなどの管弦楽作品には、舞台上に80人から110人まで楽員が並ぶ作品が珍しくない。

 聴衆の3密対策はわかりやすいが、舞台上の対策は大変だ。もちろん、人数が少なくて済むモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンの交響曲やバッハなどバロック時代の作品なら少人数でも可能だ(合唱付きの作品は除く)。実際にウィーン・フィルはそのような選曲で、全体を1時間に短縮して公開演奏会をすでに開いている。