ドイツは、コロナ対策に比較的成功した国とされている。しかし、医療崩壊といわれるほど多数の死者を出した国でも、指導者の支持率が上昇しているのは興味深い。英国のボリス・ジョンソン首相の支持率は、19年12月時点で34%、不支持率が46%だったのが、3月末になって支持率52%、不支持率26%と上昇した。

 フランスも同じだ。2018年から断続的に続く「黄色いベスト運動」に苦しみ、支持率が低迷していたフランスのエマニュエル・マクロン大統領の支持率も51%に上昇した。また、イタリアでは、反移民政党「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ氏と泥沼の抗争を繰り広げていたジュゼッペ・コンテ首相の支持率も71%に急上昇した。

 コロナ禍への対応に必ずしも成功したとはいえないにもかかわらず、欧州の指導者が軒並み支持率を回復したのはなぜか。考えられる理由は、ウイルス感染拡大を食い止めるために実施したロックダウン(都市封鎖)の打撃を和らげるために打ち出した、大規模な経済支援策だ。

 ドイツのメルケル政権は、経済的に困難な状況にある個人事業主や零細企業を対象とした最大500億ユーロのコロナ緊急支援策を決定した。英国のジョンソン政権は、国内総生産(GDP)の15%に当たる総額3500億ポンド(約47兆円)の経済対策を打ち出し、一時休業した労働者に対して、8割の給与を月額最大2500ポンド(約33万円)を最長3カ月補償する「雇用維持制度」を発表した。

 フランスのマクロン政権は、62.5億ユーロ(約7300億円)の企業支援、3000億ユーロ(約35兆円)のローン保証を決定した。そして、イタリアのコンテ政権は、250億ユーロ(約3兆円)の医療・経済支援策を発表し、GDP比の4%に当たる4000億ユーロ(約46兆円)を企業および個人事業主の支援などに投入した。

 これら欧州の各政権の大規模な経済対策の結果起こったことが、ポピュリズム政党の存在感の消滅なのだ。これまで、ポピュリズム政党が主張してきた「バラマキ政策」を、既存政党が空前絶後の規模で断行してしまった。その結果、ポピュリズム政党を支持する必要がなくなった人たちが、本来支持していた既存政党の元に戻ったのだ。