安倍政権はコロナ対応で支持率低迷も
ポピュリズムの台頭は抑止してきた

 一方、日本の安倍政権は、コロナ禍への対応で支持率が上昇せず、むしろ大きく下落した。しかし日本の場合は、元々ポピュリズムの台頭を自民党が抑え込んでいたという、欧州とは異なる状況がある。

 この連載では、日本で左派・右派のポピュリズム政党が台頭しないのは、自民党という世界最強の「キャッチ・オール・パーティ(包括政党)」が存在しているからだと指摘してきた。いわば何でもありの自民党がポピュリズムを吸収し、毒を抜いてしまうのである(第218回)。

安倍首相率いる自民党は、「右傾化」といわれるほど保守的なスタンスを取っている。そのため、「日本会議」など保守系の団体は自民党を支持している。そこに、極右のポピュリズム政党が台頭する余地はない。

 ところが、自民党が保守系団体の主張する政策を実行することはほとんどない(第144回)。自民党は保守系の支持者に対して、「日本は神の国」とか「八紘一宇」だとかリップサービスをしているが、はっきり言えば、選挙で票をもらうために、保守系団体に調子を合わせているだけにみえる。それでも、保守系団体は自民党から離れることができない。自民党の代わりに支持できる政党がないからだ。

 一方、安倍首相は、第2次政権の発足直後から「アベノミクス」と呼ばれる異次元のバラマキ政策を断行した(第163回)。その後も、「働き方改革」「女性の社会進出の推進」(第177回)や事実上の移民政策である「改正出入国管理法」(第197回)など、本来は左派野党が訴えるべき社会民主主義的な傾向が強い政策ばかり打ち出してきた。

 これは、自民党の伝統的な強さが発揮されたものだ。自民党は、イデオロギーなど関係なく、選挙に勝つためなら何でもあり。要は、「野党の政策を自分のものにしてしまい、それに予算をつけて実行することで、野党の支持者を奪ってしまう」のだ。

 この戦略を、安倍政権は露骨なほど実行してきた。その最たるものは、消費増税によって得た財源を教育無償化や子育て支援など、現役世代へのサービスの向上に充てるとする政策だ。これは元々、前原誠司・民進党代表(当時)が主張してきた「All for All」だった。だが、安倍首相はそれをほぼそのままパクり、自らの政権公約として17年10月の解散総選挙に打って出た。政策を奪われた前原代表は混乱し、小池百合子・東京都知事率いる「希望の党」との合流騒ぎを経て、遂に民進党がバラバラに分裂することになってしまった(第169回・P3)。