三菱商事「最強伝説」の終焉#6Photo:Paper Boat Creative/gettyimages

2026年3月期の通期純利益で「業界3位転落」の危機にある三菱商事。その絶対王者の背中を、最大のライバルである伊藤忠商事が給与面でも猛追している。伊藤忠の岡藤正広会長CEOは「財閥系超え」を掲げて平均年収10%アップを宣言。いよいよ有価証券報告書上の平均年収でも、唯一の“2000万円超え”を誇る三菱商事の水準に肉薄する公算が大きい。だが迎え撃つ三菱商事には福利厚生面でライバルを寄せ付けないアドバンテージがある。長期連載『クローズアップ商社』内の特集『三菱商事「最強伝説」の終焉』の#6では、数字には表れない「王者の余裕」の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)

伊藤忠の岡藤会長が年収10%アップを宣言!
王者・三菱商事の給与水準に肉薄か

「財閥系商社との格差を埋めることを優先した」「追い付け追い越せの気持ちで頑張ってもらいたい」――。

 2024年9月、「年収水準見直しについて」と題した伊藤忠商事の内部文書がSNS上に流出した。岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)の署名と共に記されていたのは、三菱商事などの財閥系商社へのライバル心がむき出しの文言だった。

 内部文書では24年度の純利益が計画値の8800億円を達成した場合、25年度から平均年収を10%アップすると宣言。「部長級4110万円」や「課長級3620万円」などの年収も具体的に例示され、SNS上で大きな話題を集めた。

 結果的に、伊藤忠は24年度の通期純利益が8803億円と計画値を達成した。伊藤忠によると、実際にベースアップなどの賃金改定が行われたという。

「ここ数年の資源価格高騰による財閥系商社の好業績の結果、当社との給与差が目立つようになってきた」と内部文書でも言及されたように、待遇面で伊藤忠は三菱商事に大きく水をあけられている。

 両社の24年度の有価証券報告書によると、三菱商事の平均年収は2033万円と総合商社唯一の「2000万円台」に達した一方、伊藤忠は1805万円とおよそ200万円の差をつけられているのだ。

 しかし岡藤会長の宣言通りに年収10%アップが実現したとすれば、25年度の平均年収は伊藤忠も「2000万円台」に迫ることになる。三菱商事も24年度の純利益は総合商社トップの9507億円という好業績を残しているため25年度の平均年収はさらに上がる可能性が高いものの、伊藤忠が三菱商事の水準に肉薄するのは間違いなさそうだ。

 次ページでは、伊藤忠の賃上げの詳細や内部文書で示されたモデル年収の“カラクリ”を徹底解剖。両社の平均年収の推移も紹介しつつ、ライバルの猛追にも動じない三菱商事の手厚い待遇の一面を明らかにする。