6月サミットで
復興基金は合意に至らず
欧州連合(EU)は6月19日に首脳会議(サミット)をビデオ会議形式で開催した。アフターコロナの経済復興を後押しすべく、欧州委員会が提唱した総額7500億ユーロ(約90兆円)規模の復興基金(recovery fund)の創設について議論したが、オーストリアやオランダ、スウェーデンなどの北部諸国の反対が根強く、合意には至らなかった。
この復興基金の財源は、独仏が5000億ユーロを拠出し、残り2500億ユーロをEUが市場から調達することで賄われる予定である。独仏が負担する5000億ユーロは、コロナ禍に伴う景気悪化が深刻な南欧諸国への支援に使われる模様だ。返済の義務を伴わない供与の形式の形で行われるという点で、かなり思い切った手段と評価できる。
他方で金融市場から調達する2500億ユーロに関しては、借款の形式で支援が行われる。当初、この復興基金の規模は全体で1~2兆ユーロとされており、うち5000億ユーロをドイツとフランスが拠出する構想であった。つまり2兆ユーロであれば、1兆5000億ユーロをEUが起債して金融市場から調達する予定だったわけだ。
EUとして金融市場から調達する分が減額された理由は、北部諸国による反発が強かったことにある。財政の一元化に対して慎重な立場を堅持する北部諸国は、コロナ禍に伴う非常時とはいえ、EU各国が共同で市場から資金を調達することに強く反対している。北部諸国から南欧諸国に所得移転が行われることにつながるためである。
大国意識を持つドイツが
財政協調に転向して呼びかけ
政府の財政状態が健全な北部諸国は低金利を謳歌できる。一方、財政状態が悪いイタリアなどの南欧諸国は高金利に苦慮している。こうした信用力の格差を均し、EU全体の財政の持続可能性を高めようという議論は以前から存在する。いわゆるEU共同債の発行をどう進めるかという話であり、EUの最大の課題である財政の一元化に直結するものだ。