コロナで岐路に立つ南欧諸国
EU債発行に慎重姿勢の北部諸国
コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)に歯止めがかからない。そのなかでも、イタリアとスペインを中心とする欧州の状況は、日に日に厳しさを増している。イタリアでは国の研究機関が「感染は3月末にピークに達した模様だ」という認識を示したが、一方で国民の間では「コロナ疲れ」が蔓延しており、社会的な緊張が高まっている。
欧州各国では、国ごとに対応の差はあるものの、感染対策としていわゆるロックダウン(都市閉鎖)が実施されている。その結果、経済活動は事実上、日常品の消費以外は停止しており、景気は腰折れ状態となっている。このような状況を受けて、コロナウイルスの感染拡大が深刻な南欧諸国を中心に、EU共同債の発行を求める声が上がっている。
EU首脳陣は3月26日、定例の首脳会議(サミット)を電話会談の形で実施した。その際、イタリアやスペインをはじめ、フランス、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スロベニア、ルクセンブルク、ベルギーを加えた9カ国が、コロナウイルスの感染拡大に伴う社会・経済的な悪影響に鑑み、EU共同債(コロナ債)を発行すべきと要請した。
現在EU各国の国債は、EUの財政ルールに基づき各国の裁量で発行されている。そのため各国の国債の信用力は、各国の財政状況に依存する。先の債務危機で財政状況が悪化した南欧諸国は、不利な状況にある。EU全体で国債を発行すれば信用力が増すため、資金調達コストが低下すると南欧諸国は期待しているのだ。
他方で、ドイツやオランダを中心とする北部諸国は、こうしたEU共同債の発行に反対し、協議は結局のところ物別れに終わった。サミット後の声明では具体的な措置については言及されず、2週間以内にユーロ圏財務相会合(ユーログループ)でEU共同債の発行に関してさらに議論を行うという方針が示され、議論は先送りとなった。