英国で猛威を振るうコロナ感染
EU離脱への道筋に垂れ込める暗雲
ジョンズ・ホプキンス大学の特設サイト(COVID-19 Tracker)によれば、英国のコロナウイルス感染者数は日本時間5月15日午前1時32分時点で23万人強(23万4440人)と世界で3番目、欧州では最多である。すでに英国の感染拡大はピーク期に達しているとされるが、他の欧州諸国に比べても新規の感染者数の減少が遅れている。
英国でも感染防止対策として、首都ロンドンを中心に3月23日から都市封鎖(ロックダウン)が実施されており、お家芸である金融業と同関連業は事実上、機能停止の状態である。大陸と比べてもロックダウンが長引くとの見方もあるなど、英国経済の先行き不透明感は色濃く、通貨ポンドの為替相場は特に対ユーロで回復の動きが鈍い。
なお英国の1~3月期の実質GDPは前期比年率7.7%減と、世界金融危機直後の2008年10~12月期(8.0%減)に相当する下げ幅を記録した。王立経済社会研究所の5月の見通しによれば、4~6月期の実質GDPは前期比年率25~30%減になると記録的なマイナス成長になると予測されている。
こうしたコロナ禍に伴う景気の悪化を受け、EU離脱後の「移行期間」の取り扱いにも変化が生じるだろう。英国は今年1月末、悲願であった欧州連合(EU)からの離脱を実現した。そして今年の12月末までは、EU離脱まで通商関係をEU加盟時と同様に保つという、激変緩和措置としての「移行期間」が適用されている。
ジョンソン首相はEU離脱直後の2月初頭、移行期間の延長回避を前提に、6月までに新たな通商関係の大枠で合意し、9月までに詳細で合意、年初に発効まで至るとするスケジュール観をEUに対して一方的に提示していた。また次期の協定の形式として、いわゆるカナダ型FTA(自由貿易協定)が望ましいという見解を示していた。
しかしながら、英国とEUとの間の意識の隔たりは大きく、交渉は全くと言っていいほど進んでいない。英国とEUは5月11日より将来的な通商関係を巡る交渉の第三ラウンドに入ったが、特に進展はなかった。6月1日に第四ラウンドが実施されるが、この半月の間で英国とEUが歩み寄れるか定かではない。