企業にとって重要な機能となっている「コミュニティ」。顧客や消費者がプロダクトの熱心なファンになれば、企業はぐんぐん成長できる。しかし、突然「コミュニティをつくる」と言われても、何から始めればいいのか分からず戸惑うビジネスパーソンは多い。本連載では、『ファンをはぐくみ事業を成長させる「コミュニティ」づくりの教科書』の著者が、コミュニティづくりに成功している人々を訪れ、その秘訣を聞きます。今回インタビューをしたのは、総務省に在籍して現在は神奈川県庁に出向するかたわら、47都道府県の地方自治体職員と国家公務員をつなぐ大規模コミュニティ「よんなな会」を主催する脇雅昭さん。公務員をつなぐコミュニティを長く運営する脇さんは、多様なコミュニティ運営のノウハウを持っている。インタビュー前編では、コミュニティを立ち上げた狙いや、参加者が当事者としてイベントに加わり、盛り上がるための工夫について聞いた。(構成/蛯谷 敏、インタビューは2019年12月に実施)。
河原あずさん(以下、河原):47都道府県の地方自治体職員と国家公務員をつなぐ巨大コミュニティ「よんなな会」。これはどのようにして始まったのですか。
脇雅昭さん(以下、脇):本当にシンプルな動機で、全国の公務員をもっと元気にしたいという思いからスタートしました。
公務員は全国に約338万人いて、人口のおよそ3%に相当する。そして残念ながら、公務員に対する世間の風当たりは強い傾向があります。ただ、もしこの人口の3%を占める公務員の志や士気が、1%でも上がれば、それだけで日本は良くなると、僕は信じています。
僕自身は、2008年に総務省に入省しました。総務省は「地方を元気にすることが日本全体の活力アップにつながる」という意識が、ほかの省庁より強い組織です。伝統的に、入省してから数ヵ月経つと、大半の新人が地方に出向します。
僕も熊本県に出向し、県庁で2年間勤務しました。当時は、「働き方改革」などが叫ばれる前のことですから、ハードワークで、時計の針が12時をまたぐまで働き続けるのが当たり前の毎日でした。疲れてヘトヘトだけど、一緒に働いていた人が親切でよくしてくれたんです。激務の合間を縫って、地元のお祭りに連れて行ってくれたり、地元の集会に呼んでくれたり。そこで、地元の人の思いや情熱に触れ、感動しました。
出向期間が終わり、総務省に戻ると、総務省の中にも地方から出向で来ている自治体の公務員の人たちがたくさんいることに気づいたんです。当時、僕が働いていた課だと、約50人のうちおよそ半分は地方からの出向者でした。
藤田祐司さん(以下、藤田):かなりいたわけですね。
脇:ただ残念なことに、僕が熊本で体験したような交流は、それほどなかったんです。出向者の多くが激務の仕事をこなし、総務省以外の人と交流する機会もなく、出向期間が解けたら、地元に戻っていた。そんな様子を見て、何かもっとできないかと思ったのがきっかけです。