個人同士のつながりが重要な時代に

河原:ほとんど交流がなかったんですか。

脇:そうですね。ただ地方から総務省に出向で来ている人たちは、未来の地方の公共団体を背負うエースです。「東京に行って、国がどう動いてるか勉強してこい」「将来役立つ人脈をつくってこい」と総務省に送り込まれている。帰任してからは組織の中枢で活躍する人も少なくありません。

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 そう考えると、なおさらもったいない。本来なら省庁の壁を越えて、同世代でつながれば、絶対に財産になります。特にこれからは社会の仕組みもどんどん複雑になっていきます。組織同士のつながりだけではなく、個人同士が「顔と顔の見える関係」を築いていること、つながりの中で仕事をすることが今以上に必要になるはずです。

 その意味では、東京は人があふれていて面白い人とつながるにはとてもいい場所です。それなのに、意外とこの環境を生かしている人が少ないと感じました。

藤田:そのためにも公務員同士をつなぐきっかけをつくりたいと考えたわけですね。

脇:そうです。まあ、最初から構想していたわけではないんですけれど。

活力がみるみる失われていく地方からの出向者

脇:最初の集まりを企画したのは、2010年頃だったと思います。当時、総務省で僕と同じ職場にいた、大分県のある市から出向してきていた同僚との出会いがきっかけでした。彼は出向してきたばかりの4月はすごく元気だったんです。しかし月を追うごとに、みるみる活力が失われていった。

河原:毎日仕事に追われ、誰とも交流せず、かつプライベートも東京での人のつながりがあまりなくて、段々と弱っていった感じでしょうか。

脇:そうですね。東京は本当はもっと楽しい場所なのに。僕はその様子を見かねて、「1度プールに行こう」と声をかけたんです。当時、僕は社会人プール部に入っていて、そこに彼を連れ出しました。

 するとすごく元気になって。しかも色々な人とつながりができたと言って、笑顔が戻ったんです。帰り際に「ありがとう」と言われて、「あれ?もしかして俺、いいことしてるんじゃないかな」と(笑)。そんな感じで声をかけたことから、相手が2人、3人と増えていきました。

 笑顔が戻る人が増えていったので、これはもっと規模を大きくして一度集まってみてはどうかと考えるようになりました。同期にも協力をあおいで、地方からの出向者で集まる会合を企画しました。

藤田:何人くらい集まったんですか。

脇:最初は60人です。同期が20人くらいいたので、1人が3人ずつ連れて来ました。自分が以前にお世話になった県のつながりや、現在働いている部署の出向者を集めてほしい、とお願いしました。「自分が出向していた時の恩返しをしよう」と考えたんです。