参加者の“お客さん”意識をなくすこと
河原:コミュニティを活性化させる秘訣はありますか。
脇:いくつかポイントはあると思います。一つは、参加者の“お客さん”意識をなくすことです。いかに当事者意識を持ってもらうか、と言い換えてもいいと思います。
例えば、開始当初から続いてるのが、「1人1品ずつ、地元のもの持ってきてもらう」というルールです。地元のもので、誰かに食べてほしい、飲んでほしいと思うものを持参してください、とお願いしているんです。すると多くの人が当日までに僕に連絡してくるんです。「1人1品っていくらくらいのものですか?」と。「1品」と言われても、参加者が何人来るかも分からない。何を持っていけばいいのかも分からない。みんな困惑しているわけです。
でも、僕は秘かにそれをしめしめと思っているんです(笑)。それによって、彼らにとってイベントが、“自分ごと”になるからです。当日の様子を思い浮かべて、「何を食べてもらおうか」と一生懸命、考えてくれる。仮にこれが、会費は5000円で、ケータリング費用に充てると説明していたら、参加者の中には「これは5000円分の価値があるかな?」などと考える人も出てくるはずです。「お金を払った分だけ、対価を得よう」と考えるようになった瞬間から、参加者は“お客さん”になって、当事者意識を失ってしまう。
それが一品ずつの持ち寄りになると、自分がオススメしたいものを届けられるという側面があるので、不思議と対価を求めようとは思わくなるんです。自分が持ってきたいだけ持ってくればいいので、負担も感じづらくなります。それも、みんな思い入れがあるので、結果的に良いものを持ってくるんです。
今も覚えているのは、沖縄の人がハブ酒持ってきてくれたこと。2万円のハブ酒だと言ってました。もうずっと「これは2万円で」と繰り返していて(笑)。ほかにもサクランボを1箱でも十分なのに、2箱持ってきてくれたり、焼酎を1ダース持ってきてくれたり。それもみなさん、自分の持ち寄った一品を、参加者に知ってもらいたいと持っている。だから放っておいても互いに宣伝し始めるんです。「これすごくおいしいから、食べてみて」って(笑)。
河原:自分が持ってきたものだからこそ、思いを込めて一生懸命宣伝するのでしょうね。
脇:はい。そしてその瞬間、参加者は”お客さん”ではなく、運営側になっている。参加者が、参加前からイベントのことを考え、イベント中も一生懸命、別の参加者に声をかけて、コミュニケーションが生まれていく。
藤田:会話のきっかけが用意されているわけですね。
脇:僕としては、最終的には参加者全員に運営してもらいたいと思っています。そうしたら「失敗」はなくなります。みんなで運営しているわけですから。だから、いかに”お客さん”の意識をなくすか常に考えています。