相撲部の悩みの種だった食費や遠征費
新潟県立海洋高校は、パンフレットやホームページに「海を学ぶ人のための学校」「海を知る。海に学ぶ。地域とともに次世代を担う海のプロを育成します」とある通り、水産科専門の高校だ。学校は旧能生町、現糸魚川市にある。
スポーツの分野で海洋高校といえば、相撲の強豪として知られる。昨年は国体で個人・団体とも新潟県が優勝した(団体は4連覇)。メンバーは全員が海洋高のOBだ。個人で優勝したのは、海洋高から日体大に進んだ中村泰輝。中村は昨年、1年生ながらインカレ(大学選手権)に優勝し、29年ぶりの1年生横綱に輝いた。
私は数年前から海洋高校相撲部の取材を続けている。選手の大半は、県内外から海洋高校の相撲部を目指してやってきた力士たち。中には、中学時代からこの地にある能生中学に入学し、高校生たちと一緒に寝食を共にし、稽古を重ねる少年もいる。中村泰輝も出身は石川県津幡町だが、小学校を卒業後すぐにこのルートに進み、海洋高校相撲部の門を叩いた。
いまは部員が6人と少ないが、たいていは10人以上が合宿所(総監督がかつて経営していた元旅館)で生活している。訪ねて驚かされるのはやはり、彼らが食べる食事の量の多さだ。同校相撲部のOBで、元教員でもある田海哲也総監督によれば、「30キロの米が2日でなくなる」というから、食費だけでも大変だ。さらに、毎月のように全国各地で親善大会などが開かれ、遠征費も必要だ。
しかも、能生町は、夏は暑く冬は積雪もあり寒さが厳しいため、夏の冷房費、冬の灯油代もかなりの額になる。県立高校だから学校の予算は限られている。学校隣接の寮費と同じ合宿所代をもらっているが、それだけでは賄いきれない。できるだけ父母に負担をかけないよう、OBや地元の後援会を組織して支援を頼んでいるが、毎年の活動費をどう工面するかは田海総監督の悩みのタネでもあった。