一つが出荷ベースの売上です。要するに、工場で商品をつくって、それを販売店へ入れたときの売上です。

 もう一つ、店頭売上というものがあります。実際に店頭で売れたときの売上です。

 花王では、売上を出荷ベースで計上し、高い数字が出ているように見せかけていた時期がありました。工場でつくった商品をどんどん販売店へと出荷し、売上を水増ししていたのです。

 たくさん販売店へ出荷したからといって、その分お客さまが買ってくれるというわけではないので、当然在庫が膨らみます。最終的に花王は400億円分もの商品を引き取ることになってしまいました。

混乱したときこそ
原点に立ち返るべき

 ちょっと考えれば、店頭売上こそが大事だということは誰にでもわかることです。目先の売上をよくすることだけを考えていた結果、起きてしまった不祥事でした。

 この事件をきっかけに、花王は方針を変えました。店頭売上を重視し、販売店での宣伝活動に注力することにしたのです。

 つまり、お客さまに商品を買ってもらう努力をしようという原点に戻ったのです。

 接客とはどういうものだろうか。サービスとはどういうものだろうか。どうすれば、顧客満足度が高まるのか。

 これらを最重視するように方向転換したのです。

 出荷ベースの売上は考えず、売れた分だけ商品を補充するわけですから、身の丈に合った生産、出荷ができるようになります。

 その結果、今まで悪かった会社の雰囲気が一気によくなっていきました。

 社員も、本来努力すべきところに力を注ぐことができるようになり、どんどん自主的にアイデアを出して実行していくようになりました。

 花王は、「消費者と顧客の立場に立つ」というそもそもの経営理念に立ち返り、会社を変えていきました。

 私はこの経験から、混乱したときこそ原点に立ち返るべきだと学んだのです。

 リーダーは、迷ったら原点に立ち返るというルールを自分のなかに持っておくようにしてください。