前法相の河井克行衆院議員(広島3区)と案里参院議員(広島選挙区)の夫妻による選挙違反事件で、東京地検特捜部は8日、2人を公職選挙法違反(買収)の罪で起訴した。法相経験者、しかも国会議員夫妻が揃って逮捕されるという異例の事件。現金を受け取った側に対する広島地検の捜査も続いていたが「一方的に渡された」として立件は見送りになる見通しで、事実上、捜査は終結した。被買収の“容疑者”だった地元・広島政界の関係者は冷や汗の日々から解放されるが、受領について一言も発していない議員らもいる。地元では大甘の処分に疑問の声や「受領の事実を認めず、説明責任も果たさないのは卑怯」と批判も聞かれる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
前法相を総括主宰者と認定
起訴状によると、克行被告は昨年3月~8月、同7月の参院選で案里被告を当選させる目的で、地元の政界関係者や有力者ら延べ108人に対し票の取りまとめを依頼し、計2900万円余の現金を渡した。
また案里被告は克行被告と共謀し、このうち5人に計170万円の現金を渡したとされる。
また特捜部は、克行被告について選挙運動全体を指揮し、連座制の対象となる「総括主宰者」と認定した。公選法では総括主宰者の行為を「加重買収」と規定し、法定刑も重い。
参院選の陣営幹部が「(克行被告が)すべてを取り仕切っていた」と口を揃えて供述。実際に案里被告の遊説日程や運動員の活動など、細かく指示していたとされる。
これを受けて、夫妻の公判は起訴から100日以内の判決を目指す「百日裁判」になるが、被買収側が94人と異例の多さだけに長期化も予想される。
克行被告は現金を渡した一部の事実を認めているが、買収の意図については否定しているという。