解散総選挙を今やれば、支持率低迷でも安倍自民党が圧勝する理由国会で答弁する安倍晋三首相 Photo:JIJI

「解散風が吹き始めた」とされる昨今だが、安倍政権はコロナ対応を巡る支持率急落が連日報じられ、今選挙をやれば自民党は大敗するという予想があるようだ。しかし、早期に衆議院を解散して総選挙に打って出れば、安倍自民党は圧勝すると筆者は考えている。その理由は、世界的に台頭していたポピュリズム(大衆迎合主義)政党をコロナが吹き飛ばしたことと深い関係がある。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

安倍・麻生・菅・甘利の
「3A1S」会合で永田町に解散風

 安倍晋三首相が、麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長の3人と、約3年ぶりに会食した。このメンバーは「3A1S」と呼ばれ、かつては「真の政権中枢」と見なされてきた。新型コロナウイルスの感染拡大が一段落したことで、内閣改造や衆議院解散、憲法改正の国民投票の発議など、今後の政局を話し合ったのではないかと憶測が飛び交い始めた。

 コロナ対策における「全校一斉休校」や「アベノマスク」の安倍首相独断での決定は国民から不信感を持たれた(本連載第237回)。国民を失望させた個人の現金給付や企業への休業補償、無駄なバラマキが多数含まれた「緊急経済対策」が厳しく批判された(第239回)。

 検事総長や検事長らの定年を内閣の裁量で最長3年間延長できる特例を盛り込んだ「検察庁法改正案」が、ツイッターを中心とした「#検察庁法改正案に抗議します」などのハッシュタグによる反対運動で廃案に追い込まれた。そして河井克行前法相・河井案里参議院議員の逮捕と、さまざまな問題が次々と噴出して、安倍政権の不支持率は過去最高レベルに達した。

 今、衆院の解散総選挙をやれば、自民党は大敗するという予想があるようだ。しかし、本稿はむしろ、早期に安倍首相が解散総選挙を断行すれば、自民党は勝利すると主張する。コロナ禍という未曽有の危機によって、安倍政権よりも野党側の方が過去にない危機的状況にある。現状を甘く考えるべきではない。