安全配慮義務の「基準」設定
義務を怠れば、訴訟リスクに
労務管理のポイントとして3つ挙げた中でも、今回のコロナ禍で、企業の人事部門が最も課題に感じているのは、安全配慮義務の「基準」設定ではないでしょうか。安全に配慮した基準を定めるのが難しいと感じるなら、逆に「安全に配慮していない環境や行為とは何か」を洗い出しても良いかもしれません。
<安全に配慮していない環境や行為の例>
a. 感染リスクの高い地域や海外に長時間の移動を伴った出張を命じた
b. 感染者が出たオフィスを消毒せずに他の従業員を出社させ働かせた
c. 1.0m程度の社会的距離でマスク不着用、十分な換気などを行わず15分以上の会議や研修を行った
d. オフィスの衛生環境が維持できないのに、テレワークを検討せずオフィス出社を命じた
e. 感染者が発生した際、濃厚接触者について対処しなかった
f. オフィス内で感染が発生しても、他の従業員に知らせなかった
g. 発熱やせきなどの症状が出た従業員を出社させたり、帰宅させなかったりした
h. 重症化の懸念が定義されている高齢者や基礎疾患を持つ従業員にテレワークなど優先かつ十分な感染防止措置を講じなかった
i. 数人以上で、コロナ禍を頑張って乗り切ろうという趣旨の食事会を管理職発案で行った
感染拡大・縮小のフェーズによって考え方が変わりますが、既に上述したような内容は、ほとんどの企業の危機管理担当、人事担当者には非常識だと認識されているかもしれません。しかし現場では方針が見えず、周知徹底できていないことが多々あります。特に感染が疑われるグレーな状態にある従業員や濃厚接触者の扱い、制限の解除のタイミングに難しさを感じ、会社や組織を守ろうとして、逆に安全配慮とは真逆のことが行われたりすることがあります。