テレワーク「マスクなしの3密会議」は訴訟リスクになる可能性があります Photo:PIXTA

新型コロナウイルス感染拡大の第2波に対する懸念が広がる今、企業は職場での感染リスク低減策を再び強化したり、テレワークを本格化させたりといった検討を行う必要があります。では、これからコロナとの共存が求められる中で、企業はどのように労務管理を行っていけばよいのでしょうか。プリンシプルBCP研究所の林田朋之所長がコロナ禍における労務管理の考え方、中でも安全配慮義務の基準設定について詳しく解説します。

パソコンの使用時間で労務管理
実は問題山積である理由

 テレワークを企業に浸透させる方法について解説した前回の記事(「テレワークをITリテラシーが低い会社でうまく浸透させる方法」)では、テレワークを一時的なものではなく、「恒久的な労働環境」として定義しましょう、という話をしました。

 ある労務系に精通した弁護士法人がまとめたコロナ禍対応の労務管理の手引きには、「テレワークでは『労働時間管理』をすべし」という記述があります。具体的な例として、パソコンの使用時間を記録し、客観的なログによって労働時間管理をする方法が挙げられています。

 恐らくこの考え方は、多くの従業員が出退勤時間に基づく時間管理で働いている「平時」をベースにしたものと推察しますが、既に多くの企業でテレワークの実例がある中、こうした時間管理をしている企業がどれほどあるのかは疑問です。

 このパソコンの使用時間によって労働時間を管理する方法。以前から存在しているパソコンの使用時間のログが取れるソフトウエアを例に取ると、PCのキーボードのタイピングが休止している時間を計り、一定時間を越えるとアラートレベルが上がり、上司にその状況が伝わるものになります。

 一見真っ当そうな管理方法に見えますが、働き方によっては実効性に問題がありそうです。特に、PCを使わないような仕事やクリエイティブな仕事には当然向かないですし、こういった仕組みを導入すれば、管理職の監視にかかる負荷も小さくありません。そもそも管理職の仕事の大半がテレワークの部下の労働時間監視だというのは、悲しく思えてきます。

 このようにテレワークを例にとっても、今回のコロナ禍で、一律に以前の労働環境や就労規程に準じた管理をすることには、疑問が残ります。一方で、管理する側(人事部門)としては、イレギュラーな対応や例外を極力設けたくないという心理も働くため、先の弁護士法人の手引きはそこに配慮して作られているのかもしれません。