新型コロナウイルス対策をきちんと取っている企業がある一方、社内でマスクを禁止したり、「3密」状態での会議を強いたりするなど、問題のある企業も散見される。過去の判例をひもときつつ、正しいコロナ対策を行っていない企業の抱えるリスクを解説する。(丸の内総合法律事務所 弁護士 中野明安)

会社でマスクを着けて…
従業員から上がる悲鳴

ゴールデンウィーク明けに通勤する人々
マスクを着用させてくれない、3密の環境での会議を強いられる、果ては「気合でコロナを吹き飛ばせ」と言われるなどの事例が後を絶たない Photo:JIJI

 新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。全国に緊急事態宣言がなされて以降も感染者数が大きく減ることはなく、さらなる第2波、第3波を考えると、新薬やワクチンの開発、承認が急ピッチで進められているとしても、この「目に見えないリスク」が収束することはまだまだ先のように思われる。安倍首相がコメントした「かつての日常に戻る」のは、いつの日になることか。

 新型コロナまん延防止のため、外出自粛や、多くの事業者の涙ぐましい企業努力による休業や在宅勤務が実施されているが、このような国難とも言われる大変な状況下にあるにもかかわらず、相変わらず無頓着な会社もあるようだ。

 新聞などの報道によれば、新型コロナウイルス感染予防のための「3密」回避対策が不十分だとして、従業員と労働組合が勤務先会社に対して(1)3密環境の改善(2)感染症対策の徹底(3)危険手当の支払い(4)適切な休業補償――を求めたケースがあったという。同社では高層ビルのため窓を開けての換気ができず、約100人が最短約1メートル間隔で勤務する「密閉」「密集」「密接」の3密状態のうえ、机や椅子などは共有で、マスク着用やアルコール消毒の義務付けもされていないという。

 さらに、労働組合などには次のような相談が来ているという。

「仕事の際のマスク着用が禁止されている。法律で国民全員にマスク着用を義務付けてほしい」
「職場でマスク着用を要望したら上司から『マスクはあくまで体調不良の者が着けるものだ。手指消毒だけしていればいい』と断られた」
「毎月1度、社員100名が集合する会議があり、体調の悪い人も参加しています。しかし、参加は絶対で断れません」
「最近、正社員には時差出勤が命じられたが、派遣社員にはなんの連絡もない」

「法律で国民全員にマスク着用を義務付けてほしい」とは切実な思いであろう。では、これらの声について、法律はどうなっているのかを確認してみたい。