アドビが6月10日にリリースしたスマートフォン向けのアプリ「Photoshop Camera(フォトショップカメラ)」をじっくり使い込んでみました。本稿では、同アプリがどんな場面で活用するのかなど、筆者視点でのインプレッションをお届けします。

おそらく汎用性が高いのは風景写真

 Photoshop Cameraは「フォトショップ」を冠するカメラアプリですが、「レンズ」と呼ばれるエフェクトのパッケージを選ぶことで写真に合成加工を施せる仕組みになっており、本家フォトショップの操作を知らない人でも簡単に扱えます。「レンズ」のバリエーションはリリース時点で80種類あり、随時追加されるとのこと。執筆現在でも、そこからさらにLGBTプライド月間に関するレンズなどが数種類追加されていました。

 同アプリは、フィルターを選択するような一般的な画像加工アプリと同様の感覚で使えます。しかし、その裏ではアドビのAIプラットフォームである「Adobe Sensei」が駆使されており、被写体の境界線を高精度に認識可能。たとえば、風景写真の空の部分を、置き換えるような編集が可能です。

 ただし、全レンズを試してみた感想として、活用しやすいシーンは限られているように感じます。もっとも使いやすいのは、先述の通り風景写真などの空を置き換えるパターン。旅行先の記念撮影で天気が悪かったような作品に「ブルースカイ」や「天体」レンズなどを適用することで、写真素材を無駄にせず楽しむことができるでしょう。

元の写真(左)に「天体」レンズを適用すると、電線をきれいに認識して空が夜空に変わった(右)

 試しに電線を撮影してみましたが、一本一本の線をきれいに認識してくれるのは感動もの。Photoshopを使って手動で同じ操作をするならそこそこ手間がかかる処理が想定されるので、手持ちの写真を青空や星空に変換したいという人は使ってみる価値は高いと言えます。

昼間の写真に「天体」レンズを適用した様子(左)。ブルースカイを適用した様子(右)。なお、2本指で背景のサイズ調節が可能だが、縮小するとサイズが足りなくなってしまうのは惜しい(右)
スタジオ照明3/6と4/6を比較。3/6では左から、4/6では右から光を当てるように、想定している照明の方向が異なるのがわかる

ポートレートでは「スタジオ照明」が優秀

 また、人物写真については、多くのレンズがあるものの、エフェクトがきつめのものが多く、正直30代の筆者の感性では扱いづらい印象を受けました。一方で、重宝するものも確かにあり、「スタジオ照明」レンズでは繊細なライティングが調整可能。他のアプリにはない独自の魅力を感じる部分もありました。

 具体的には、スタジオ照明のバリエーションは複数あり、人物にライトが当たる角度をいくつかのパターンで選択できます。複数のライティング環境を簡単に再現できるので、ポートレートを頻繁に撮る人にとって重宝することでしょう。

たとえばプロパティにある「ボケの明るさ」を高くすることではっきりとした玉ボケ風の背景にも加工できた

 またスタジオ照明では、編集画面で表示できるプロパティの項目が多く、「照明」と「フェイスライト」を別々に調整できたり、スマホのインカメラでありがちな顔の歪みを調整できる「顔の距離」項目が用意されていたりします。さらに背景のボケについては、「ボケの量」「ボケの明るさ」「背景のフェード」という3項目をカスタマイズできる仕様。iPhoneのポートレートモードと比べて、Photoshop Cameraを通じた処理の方が柔軟な調整がしやすいと感じました。

iPadで書いた線画(左)に「ポップアート」を適用(右)

イラストや動画素材の加工もあり

 変化球としてほかに面白い使い方はないかなと試した結果、イラストや動画素材の加工にも使えそうだと思いました。たとえば、iPad Proでサッと書いた線画に対してフィルターを適用すると、一瞬で背景が整います。ちょっとした落書きをSNSにUPするまえにアクセントを加える意味では面白いかもしれません。

同じく「活気」(左)、「混合メディア」(右)を適用したもの

 一部のレンズは画面右上の再生アイコンがオンになっていれば、「.MOV」の動画ファイルとして出力が可能です。たとえば、画面ノイズを適用して出力しおき、動画のトランジション代わりに活用するような応用も考えられます。

風景写真に「画像ノイズ」を適用したもの(右)。右上に再生のアイコンが表示されており、動画として出力可能
必要システム構成

今後のアップデートにも期待

 さて、Photoshop Cameraを使ううえで、気になる部分も3つありました。まず、同アプリを利用するにはアドビアカウント(無料)でのログインが必要で、対象年齢は13歳以上となります。システム構成については、iOS 12以降のiPhone 6s以降、およびAndroid 9以降の一部デバイスをサポートするとありますが、AndroidはPixelやGalaxyなどの一部シリーズに限定されている点に注意が必要。いまのところXperiaやAQUOSの名前は記載されていません。

 次に、やはり使用シーンが限定されるということ。いまのところ加工のパターンが限られているので、SNSに公開して楽しめる期間は短いような印象を受けました。アーティスティックなレンズも個人的に感性が合わず、レビューという視点を超えて遊べないのが正直なところ。レンズのバリエーションが今後増えることに期待したいと思います。Photoshop Camera自体は無料で使えますし、気長に待つのは問題ないかなと――。

 そして、これは贅沢な望みかもしれませんが、やはり自動認識された被写体の輪郭を微調整はできるようにしてほしい。一応、別アプリとして連携できる「Photoshop Express」に、輪郭調整機能はあるものの、この調整はPhotoshop Cameraでの可能そのものには影響しないようなので、実質的に被写体の輪郭がうまく認識されるかどうかは撮影した写真頼みという状況。

 Photoshop Cameraでの加工を想定する場合には、あらかじめ数カットを撮影しておくように心がけた方が良いかもしれません。