また、リモートだと、体の表現力は発揮しづらいが、顔の表現力は発揮できる。リモートでのビジネス上の対話や会議で、体の動きを表現する人は少ない。そもそも体全体は写らないことが多いので、体の動きをしないことが普通だが、無意識のうちに、顔の動きも停止して参加しているケースが実に多い。おとなしく、静止して参加している状態だ。

 自分では表情や口を動かしているつもりでも、カメラ越しの相手からみると動いていない、のっぺりした様子に見えてしまう。リモートでは、自分が思う以上に、顔の筋肉を動かす、口を大きく動かして発音することが大事だ。

 例えば、対面に比べてリモートでは実施されていない動作に、うなずきがある。リモートで相手の話に対して、うなずくという動作をするだけで、それをしない場合よりも、相手を引き付けることができる。

 そして、マスクをしていても、リモートでも、対面のときと同様に駆使できるスキルが、構成力だ。どのような順番で説明するか、相手の話に対してどのような順番で返答するかを工夫することだ。先述の通り、対面のときに比べて顔や体の表情で補うことができない分、情報が限られる。話の内容、つきつめれば話の構成が、相手を巻き込めるかどうかを左右するようになる。

 結論から聞きたい人に、経過をたどって順に説明しても話がかみ合わない。あるいは、現状から積み上げて丁寧に話してほしい人に、要点だけ話すのも好ましくない。こうした説明や返答の構成の比重が高まる。

 マスク着用状態でも、リモート状態でも、このようなコミュニケーションやエンゲージメントの低下に歯止めをかけるスキル訓練をしている会社と、放置している会社とでは、早晩、業績に大きな差が出ると思えてならない。