長く取り組めるゲームデザイン
自分のジムで自分のペース

 アドベンチャーモードではゲーム内の自分と現実の自分を育てていく両方の楽しみがあるが、全体的な作りはRPGとして見たらざっくりしたものである。ストーリーも「世界を悪に染めようとするやつをやっつけよう」といったテイストで、筆者は特に使命感を持つことなく取り組んでいる。

 これには個人的ながら理由があって、主人公と冒険をともにする先述の“リング”が、新しい能力を獲得した際に「キタキタキター!」と瞳孔を開いて叫ぶので、それを見ていて不安な気持ちになるのである。一応世界を救うために冒険をしてはいるが、このリングを信用していいのだろうか、このリングに成り行きで力を貸しているけど本当はだまされていて、最終的にリングが悪いやつだと判明したらどうしよう…と今から心配である。この辺りの展開が気になるといった意味では先が楽しみなストーリーではある。

 しかしRPGとしての面白さはこれくらいがちょうどいいかもしれない。面白すぎるとのめり込んで過剰に運動して健康を害してしまうかもしれないし、攻略重視の人は運動負荷を下げてゲーム本来の目的である「フィットネスする」ということを見失ってしまうかもしれないのである。とすると現在のこの仕上がりが、フィットネスゲームとして絶妙のあんばいであるようにも思われてくる。

 ゲームの最初と最後にはストレッチがある。やらなくても別にいいのだが、やると経験値がもらえてレベルが上がるし、ストレッチ中、画面上部にフィットネスや健康に関する知恵が表示されて、これがまた面白い。退屈しがちなストレッチを飽きさせない工夫である。最後にやるストレッチはその日使った筋肉をほぐすようなメニューで組まれるので、ささやかながら専属のトレーナーでもついたかのような気分になる。

 今のところ日に10~30分を週に4~5日のペースでプレイしているが、ゲーム内でも「長続きさせるためにはプレイを義務に感じず、自分のペースで気楽に行うこと」と推奨されているのに従って、極めて気楽に取り組めている。

 肝心の腹は、バキバキのシックスパックとは程遠いが順調に少しずつ引き締まってきた。バンドマン時代と違って腹筋だけでなくまんべんなく鍛えているので自己満足度は高い。「長編RPGはだるいけど肩こり改善は目指したい」といった人や、「ミニゲームで軽く体を動かしたい」といった人にも気に入るものが見つかるのではないか。

『リングフィット』は自宅をお手軽にフィットネスジム化できるゲームである。孤独になりがちな筋トレやヨガも、激しい効果音や激励の声に彩られれば、そこそこがんばれるものに変わる。運動ガチ勢のプレイ所感は聞いたことがないのでわからないが、少なくとも運動素人勢にとっては非常に有意義なツールであると感じた。コロナ禍にあって自宅で過ごす時間が増えた昨今、この有益なる『リングフィット アドベンチャー』が品薄になるのは自明の理であった。