中国金融システムの「破壊者」から、国を代表する一流企業へと成長を遂げている馬雲(ジャック・マー)氏の金融テクノロジー会社アント・グループが、注目の新規株式公開(IPO)に踏み切る。同社は20日、香港と上海の両市場でIPOを計画していると発表。米中間の通商・政治問題を巡る緊張が高まる中で、ニューヨーク市場は上場先として選択しなかった。アントのIPOは、中国版ナスダック「科創板(スター・マーケット)」の創設からほぼ1周年のタイミングに当たる。科創板は、中国当局者が「国産テクノロジー大手」の上場先として育成を目指している市場だ。「ナスダックにアップルが加わるようなものだ」。創業初期からアントに投資していたプライベート・エクイティ(PE)会社、春華資本集団(プリマベーラ・キャピタル・グループ)の創業者である胡祖六(フレッド・フー)氏はこう指摘する。同氏は、アントの上場は科創板に大きな追い風となるほか、香港にとっても金融資本の国際拠点としての地位を固めるものだと話す。