トランスジェンダーが置かれた現状を目の当たりにして
そして、そんな父の言葉が現実となる“感動の瞬間”が訪れる。
「小さい頃からミス・ユニバースなどのコンテストを見るのが好きだったんですけど、トランスジェンダーの美を競うコンテストがあることを知って、テレビにたくさん出演させていただけるようになった2007年に挑戦することになったんです。あのきらびやかな世界に私も参加できるんだ、とにかくクールでいなきゃと皆さんの真似をして、世界レベルについていこうと必死だったんですが、結果は4位。悔しかったですね。そんな経験をバネに、2009年に再びチャレンジしました。どんなことをしてでも1位は獲りたいけど、人と同じことをしては意味がない。今回は自分らしくいようと臨んだ結果、ミス・インターナショナルクイーンとして、世界の頂点に立つことができました。本選の舞台となったタイから日本にいる父に電話して、私としては『うぉーっ、やったか!』みたいな反応を期待していたんだけど、お父さんは『ホンマ、お疲れさん』って一言だけ。それもお父さんらしいなって思いましたね。大舞台で頑張ることができたのは、あの時、父がかけてくれた言葉があったからだと思います」
世界の頂点に立ち、栄華を極めたものの、そこではるなは他の国のトランスジェンダーが置かれた現状を目の当たりにして、激しい衝撃を受けた。
「コンテストの参加者と食事をしているときにネパールの子がいきなり泣き出したんです。理由を聞いてみたら、『タイという国は、トランスジェンダーにとってとても自由だから羨ましい。世界にはまだまだ理解してもらえない人がたくさんいる。世界一になったからには視野を広く持って、かつての私やコンテストでのネパールの子と同じように苦しんでいる人たちの役に立ちたい。私たちの国ではいまだに石を投げつけられたり、差別されることが当たり前だ』って。私はテレビに出て、世間から受け入れてもらえるようになったけど、世界にはまだまだ理解してもらえない人がたくさんいる。世界一になったからには視野を広く持って、かつての私やネパールの子と同じように苦しんでいる人たちの役に立ちたい。そう強く願うきっかけをくれた大会でした」