実質賃金マイナスはいつまで続くのか?「賃上げ継続」正念場に官民がやるべきことPhoto:PIXTA

政局は“視界不良”でも
最優先の経済政策は不変

 参院選挙は与党にとって極めて厳しい結果となり、政局は視界不良の状況だ。

 与党過半数割れでも比較第1党を維持したことを根拠に石破茂首相は続投する意向を示しているが、自民党内での反発の声が強く、退陣の観測もある。

 政権がどのような枠組みで誰が首相になるにせよ、政権運営が不安定なものになることは避けられない。とはいえ、経済政策の最重要課題は、「持続的な賃上げ」であることは不変だ。

 名目賃金のプラスが定着してきたことは大きな前進だが、実質賃金が依然としてマイナス基調を脱していないことが大きな課題として残る。

 最大の懸念材料だった米国の相互関税率や自動車関税が25%から15%に引き下げられることで一応の決着をみたとはいえ、二桁の関税のマイナス影響を無視はできず、今後、半導体や医薬品への高率関税も検討されていることを考えれば、楽観はできない。

 関税引き上げが景気や輸出企業などの業績を下押しすることは避けられず、この2年の高い春闘賃上げの持続性にはネガティブファクターであることは変わらない。来年春闘は賃上げ率の鈍化が避けられない見通しだ。円安で輸入価格の上昇も見込まれる。

 最大の懸念は、実質賃金のマイナス幅が拡大することだ。

 政府は中小企業が労務費を価格に転嫁できるようにするなどのきめ細かな支援とともに、輸出企業は、「お得感のある価格」といった価格戦略を見直すなどで、実質賃金低下の隠れた要因である交易条件の改善の取り組みを進めることが重要だ。